漫画道場


こんにちは、道場主です。
今回は、リアル問題を取り上げたいと思います。


最近、何かと話題なのが、滋賀県大津市の
大津市立皇子山中学校で起きた、いじめ問題ですね。
ネットでは炎上が続き、関係者の実名が暴露され、
それをデヴィ夫人が拡散するという、収拾の付かない事態となっています。

加熱しすぎな感もありますが、やはり問題は、
学校や市、警察の対応のまずさにあるかと思います。
事無かれにするには、重すぎる事件です。


もしもこの問題、和田慎二先生がご存命であったなら、
どういったご意見を示されただろうかと考えてしまいます。

和田先生は『スケバン刑事』の作者であり、
学校という閉鎖環境にうごめく「闇」を、真剣に取り上げられた方でした。


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スケバン刑事


『スケバン刑事』については、ドラマ化もされ人気を博しましたので、
改めて紹介するまでもないと思いますが、
この原作は、警察が踏み入れない聖域である学校に、
主人公の麻宮サキが学生刑事として潜入し、
問題を解決するといったテーマを基本プロットとしています。


で、麻宮サキはいくつかのいじめ問題にもぶち当たってます。
例えば第2部「新たなる戦い」編ですね。

鷹ノ羽高校に戻ってきたサキは、生まれつき体の弱い片岡くんを
無理やりトラックで走らせる剣道部の部長と対峙します。
部長の目は、まっすぐに自分を信じる輝きを持っていました。
ところが、しごきの最中に片岡くんが倒れて死亡し、
部長はこれを片岡くんの心身の弱さのせいにします。

部長の発言に怒ったサキは、


> 性根ってのはな、同じ立場にたった時、
 どれだけがんばれるかを言うんだ。
 片岡に比べれば、てめぇらの根性など豆腐も同然だ!



と、刀を取り上げ、部長の手に突き刺します。
いいぞもっとやれ。


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いじめの根幹にあるのは、閉鎖環境の中で生まれた序列関係が
優位に立つ生徒を増長させていく事にあるそうです。

この序列については、統計学上でも証明されています。
陸上の為末選手が研究論文を発表してますが、
プロのスポーツ選手になった人の誕生日を調べてみると、
4月生まれが最も多く、3月生まれが最も少ないそうです。
Jリーグ選手を対象に行った調査でも、同様の結果が得られています。

誕生日が遅い人ほど、先に生まれた人より劣等感を抱きやすく、
学校という閉鎖環境の中で、身体的な序列を付けられる事で、
自分の将来を決め付けてしまうのが原因らしいです。
それに対し身体的に恵まれた人は、剣道部の部長のように
優越感を抱きやすく、自分の行いに疑問を持たなくなる。
こういった傾向が、誕生日の差として顕れやすいんでしょうね。


序列関係が生まれる事は、『3月のライオン』の6巻でも、
いじめに苦しむひなちゃんがこう言ってました。


> 何かクラスの中に見えない階級とかがあって、その階級にあわせて、
 「どれくらい大きな声で笑っていい」とか、
 「教室の中でどれくらい自由に楽しくふるまっていい」とかが
 決められてるみたいな…。

 …ねぇ桐山くん、あれは何なの?
 私たちみんな同じ、ただの中学生のはずなのに。
 ただの同じ、人間のはずなのに。



本当は第三者である先生が、こういった学校の「闇」に
先導して立ち向かわなければならないはずで、
ひなちゃんのクラスも結局、学年主任の国分先生が介入するまで、
いじめ問題が解決するには至りませんでした。


サキもやはり第三者として、「闇」に介入していきます。

第1部「無法の街」編では、生徒から慕われているという若松なる先生が、
学校の「闇」の部分を見過ごし放置していたのを見て、
サキの追っかけをする三平と、こんな会話をやりとりします。


> ねぇサキさん まともな教師ってのは日本に何人いるんでしょう。

> もしいい教師ばかりなら…
 あたしみたいな学生刑事は必要なくなるかも…しれないねぇ。



サキの母校・鷹ノ羽高校には不良教師の沼先生が居るのですが、
サキはこの先生の言葉を若松の引き合いに出します。


> 沼先生がこう言ったことがあったんだ。

 サキ…おれは自分でもいい教師じゃないと思うぜ。
 なにせ人数が多すぎる…。

 だがなぁサキよ…。2人か3人…せめて5人の生徒なら、
 おれはいい教師になる自信があるんだぜ…



な…なんという至言!


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現実に起こるいじめ問題も、学校や市にだって言い分はあると思います。
先生もカウンセラーとしての専門の知識がある訳ではありませんし。

しかし、目の前の問題から目を背ける事とは別ではないかと。
自分の言い分を泣いて訴える先生が居ましたけど、
いやいや、泣きたいのは亡くなった生徒の親御さんの方ですから。


かつて私は、実際にこういう場面に出くわした事があります。

体育教師ですら手を焼く暴れ放題の男の子が居て、
その子が別の同級生の子から言いがかりの末に殴られて、
報復にぼっこぼこにしてしまい、誰も止める事が出来ない状況。

これを止めたのは、理科の先生でした。
つかつか歩みよって、この男の子の襟を掴んで立たせた後、
おもっきしビンタをかましたんですよ。

で、ビンタされた男の子もいきり立って、
「先にやったのは相手の方だ、自分は悪くない」と言うのですが、
先生はただひと言、「だってこっちは泣いてるじゃないか」と。

喧嘩をしかけた相手の子は、床に横たわり、
口と鼻から出血して泣きはらしてる。
対してこの男の子は、最初にもらった一発だけ。
これを諭した事で、喧嘩はぴたりと収束しました。

誰も止められなかった生徒を、たったひと言で納得させる。
しかもそれをやったのが、見るからに弱そうな理科の先生っていう。
どっちが悪いじゃなく、目の前の問題だけを見て、
体を張って介入していく先生の姿を、私は未だに覚えています。


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最近じゃこういうのは体罰として取り上げられるそうですが、
殴るのが良いか悪いかも、やはり別問題です。
理を正せば殴られる相手も納得するものだと、経験上から思います。

生徒が目に見えない序列関係を強いているなら、
それに介入できるのは第三者、特に先生だけでしょう。
先生と生徒は立場が違いますし、生徒それぞれに価値を置いているなら、
何も介入せずにのさばらせている事の方が悪いと言えます。


和田先生なら、この問題をどのようにとらえられたでしょうか。
麻宮サキのような学生刑事が本当に存在したなら、
この中学校はとっくに裁かれているでしょうね。
 


ご清覧ありがとうございました。