エネトロンタンク


↑「人類の命の源」と称される、完全無欠のクリーンエネルギー。


 都市生活を支える巨大なエネルギー、エネトロン。
 それを狙い、人類を脅かす存在・ヴァグラス。
 ゴーバスターズとは、人々を守る「特命」を帯びて戦う若者達の事である!


今回は、『特命戦隊ゴーバスターズ』の考察を行います。

スーパー戦隊シリーズにおいては、30年以上の長きに渡って、
子供目線から見ても分かるような作り方がなされてきました。
しかし、36作目となるこの『ゴーバスターズ』だけは、
これまでとは異なる表現が用いられているような気がするのです。

なぜ私がそう感じたのかは、以前の特撮短評で述べた通りですが、
今回はそれを詳細にまとめて、この作品の背景を考えてみます。


なお、これまでの考察とは違い、完全に私見で記事を作成しています。
ここで明らかにする事のいくつかは、とても客観性のあるものではありません。
それを踏まえた上で、お読みになって頂けたらと思います。


―――


『ゴーバスターズ』は過去のシリーズと何が違うのか?

変身バンクシーンの撤廃や、巨大ロボットの同時侵攻はもちろんですが、
それ以上に、「何か」を象徴すると思われる隠喩らしきものが、
作品の背景からうっすらと感じられるという事です。

そもそもこの考察は、なぜ2011年の東日本大震災の翌年に、
エネルギー問題をテーマにした作品を発表したのかという疑問からスタートしてます。
人類にとって必要不可欠なエネトロンをクリーンエネルギーの象徴として扱えば、
あの忌まわしい原発事故が想起されるのも不思議ではありません。
実際にGoogleで「エネトロン」を検索すると、「原発」のキーワードが付いてきます。
それだけ多くの人が感じ取り、検索しているという事です。

過去のシリーズでここまで踏み込んだテーマを採用したのは、
1999年『救急戦隊ゴーゴーファイブ』で、ノストラダムスの予言を取り上げたくらい。
それでも今年よりははるかにライトな表現です。


『ゴーバスターズ』が原発事故の影響を受けて作られたと仮定した場合、
作中に出てくるいくつかの表現が引っかかってきます。


(1) 「13年前の事故」

舞台は新西暦2012年。13年前の1999年に起きた「亜空間の事故」で、
主人公の3人の運命は大きく変わってしまったと語られていますが、
これを西暦に直すと、日本国内で初めて事故被曝による犠牲者を出した、
東海村JCO臨界事故」を示唆している可能性が出てきます。

原発の運用是非で国が二分する中で、あえて13年前の出来事を
象徴的に取り上げる必要性があるのかを考えたら、こういう結論に至りました。
わざわざ新西暦に言い直してパラレルワールドという設定にしているのは、
原発事故を想起させないよう、オブラートに包む為ではないでしょうか。


(2) 「亜空間」

亜空間」では人は生きられないという表立った設定も、
やはり「放射能」による放射線被曝を示唆しているのではと思えてしまいます。
あの荒廃した建物や風景を見ていると、まるで放射能汚染によって
人が住めなくなった土地を見ているような気にさえなるのです。

これもまた現在住んでいる世界とは別次元であるように描写されており、
マイルドな表現に抑えられていると言えるでしょうね。


(3) 「メサイア」

メサイア(Messiah)」はメシア=救世主を意味する言葉で、
元々は敵の親玉の名前ではなく、転送研究センターで使われている
スーパーコンピュータのメインプログラムの名前として使われていたものです。
それが、コンピュータウイルスによって暴走し、今の姿になっています。

つまり「メサイア」は「悪意」の象徴で、どんなに優れたシステムでも、
使い方を誤れば大きな「事故」に繋がる事を示唆しているように感じられます。
これも、コンピュータという1つのクッションを置いている為、
意図的に分かり難い表現にされていて、それが今作の分かり難さにもなってます。


以上を踏まえて、主人公3人のこれまでのストーリーを振り返ってみましょう。


―――


「メサイア」による「13年前の事故」の後、ヒロム、リュウジ、ヨーコの3人は、
ヒロムの父やヨーコの母のおかげで切り離された「亜空間」から脱出し、
ヒロムは泣いているヨーコに、「亜空間」の人々を元に戻す約束を結びます。

それから時は進み、わずかな量で莫大な動力を得る事が出来て、
人体にも全く悪影響が無いという、夢のような新エネルギーが発見され、
人類のライフラインを支える、なくてはならないものになります。

ところが、13年前に収束したはずの「メサイア」が、この新エネルギーを狙い、
「亜空間」から再び元の世界へと侵食し始め、人類を脅かすようになりました。
成長したヒロム達は新エネルギーを悪用されないよう安全に管理する、
エネルギー管理局・特命部に配属され、「メサイア」の脅威と戦っていきます。


幾多の闘争を経て、「亜空間」の内部に潜入したヒロム達は、
「13年前の事故」で取り残された人々を何とか救おうと画策しますが、
実は彼らは「メサイア」によって「亜空間」の一部に取り込まれていました。
「メサイア」の脅威を破れば、「亜空間」に取り残された人々も見捨てる事になる。


ヒロムは決断します。

> 俺達がここで迷う事は父さん達の覚悟を無駄にする事になる。
> 世界を終わらせる事になる。俺達の13年はそんな事の為にあったんじゃない。



そしてヨーコにはこう告げます。

> 俺は約束を破る。13年前は元には戻せない。


ヨーコもこれを承諾し、ヒロムはリュウジらと共に「メサイア」を振り払い、
世界の秩序を守る事に成功しました。


…と、ここまでがおさらい。


問題はここからです。
「」の中身を、以下に置き換えてみて下さい。


・ 13年前の事故 → 原発事故
・ 亜空間 → 被災地
・ メサイア → 事故の元凶(つまり原発)



違和感なく、すんなり読み解けませんか?

もしも『ゴーバスターズ』が原発事故後に起きたエネルギー問題に
本当に影響を受けていたとしたなら、全く違った解釈が出来るのです。
つまり、もう2度と同じ悲劇を繰り返させないと。


ヒロムの台詞の意味合いも変わってきます。

> 13年前は元には戻せない。


この言葉は、原発事故で失ってしまった日本の故郷が、
元の形のままを取り戻す事が恐らく出来ない事を暗に示しているんじゃないかと。
しかしながら作中で描かれたように、決してネガティブな意味ではなく、
残された世代が未来を目指して歩みを進めるエネルギーになっていく
そんなメッセージが込められているように思えます。


 すべては あの日きっと
 始まっていた 運命(デスティニー)
 僕らは 逃げたりしない
 止まることなく 未来を見た


第1話の時から注意深く観てきた今作のテーマが、暗さを払拭し、
希望の持てる内容でひと段落を迎える事が出来て、本当に良かったです。


おまけに、恒例の予言タイム。



―――


重ねて述べますが、これは私が考える作中のテーマであり、
脚本を手がける小林靖子さんが本当にこれを意図していたのかは別です。
一見すると筋が通っているように見えても、この考察の土台は、
『電王』や『オーズ』に隠された背景を見事に描ききった小林さんなら、
何かしらの隠喩を作品に残す事もするだろうという推論で成り立っています。

ですので、あくまで解釈のひとつとして捉えて頂ければと思います。


一刻も早く原発問題に終止符を打ち、被災者の皆様が
笑顔で故郷の地を踏める日が来る事を心より願っています。
 


ご清覧ありがとうございました。