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ネタ考察

【ネタ考察】もしも『バクマン。』の七峰透がデミングサイクルを導入したら



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↑悪の栄えた試しなし…なんてはずはない!


アニメ『バクマン。』も、ついに七峰くんが登場しましたね。

さて道場主は、原作で七峰くんが例の50人合議制を初披露した時、
亜城木夢叶は七峰くんに必ず敗北すると思っていました。
このやり方が漫画業界に一石を投じる提案であったのに対し、
サイコー達2人が七峰くんに宣言した「PCPで叩き潰す」の根拠が、
「そんなやり方はプロとして許せない」からという、
極めて曖昧な個人的主観に基づくものであったからです。
キミタチ、面白さ至上主義じゃなかったんかい。

ところが結果は、七峰くんの自滅という形で作品打ち切りとなり、
投じられた石が何の波紋も起こさぬまま、このエピソードは終わりました。
すっごく煮え切らない思いをしましたよ私は、ええ。

確かに七峰くんの方にも明らかな失点があり、
50人の意見を纏めるほどの力が無かった事実は存在します。
ですが、それは七峰くんのプロデュース力が否定されただけで、
合議制そのものが否定された訳ではありません。
それどころか、作品の面白ささえ継続できていれば、
漫画家先生の苦労を低減する、実に理想的な手法である事を、
後にシュージンも認めちゃっているのです。


では、七峰メソッドが完璧な管理の下で行われていたら、勝負はどうなったか?
編集との二人三脚で良質な作品を生む手法に勝てるのか?

邪道バトルの申し子・道場主が、これを考察してみたいと思います。


【その他のネタ考察】
 もしもIQ80の引きこもりが夜神月の『DEATH NOTE』を拾ったら
 もしも乙女漫画の男子と萌え漫画の女子が付き合ったら


―――


まず、勝敗の基準となる「面白さ」とは何ぞやという所から決めましょう。
漫画をテレビや自動車のように、1つの商品として見た場合、
漫画作品の面白さは「品質」の事であると定義出来ます。
モノ作りにおける製品、芸術活動における作品という違いがあるだけで、
顧客満足に応えるものであるか否かが、商品優劣を決定すると言えるでしょう。

品質は、時間をかければその分だけ良くなります。
しかし週刊連載を続けていく上では、時間をかける事は許されません。
従来の漫画作品は、時間と品質との兼ね合いによって生まれてきましたが、
品質に拘りすぎると、連載が継続できないケースも出てきます…。
時間と品質は、トレードオフの関係なのです。

で、もしこの品質を複数人でマネジメントしていくとしたら、
先生方を苦しめる時間的制約が一気に解消出来る可能性がありますし、
先週までは神展開だったのに今週の展開はいまいちといった、
品質のバラツキも未然に防ぎ、一定の面白さを保つ事だって容易になるでしょう。
時間短縮と品質向上が両立できちゃう、夢のようなお話です。


しかし、50人で面白いネタを考え、七峰くん1人が意志決定をするやり方では、
出来うる品質にも限界が生じ、必ず破綻を起こします。
面白さを判断するのは顧客であって、七峰くんではないからです。


七峰メソッドを管理図で表すと、こうなります。

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七峰くんは読者アンケートの結果が亜城木作品を越えられなかった理由を、
「レベルが高すぎて読者が理解できなかったから」と断じ、
読者より50人の力を信頼していたがゆえに、まともに分析してません。
しかもこの50人の中にも、顧客ニーズを作品に取り入れようとした人が居ません。
仮にも編集経験者とか居るんだろ? 勝負の2話目()とかいう眉唾より、
少しでも読者に満足してもらえるアイデアを出せよマジで。

作品の品質を上げる為には、読者が何を望んでいるかを正確に把握し、
計画方針の段階からそれを落とし込まなくてはなりません。
品質学の観点から見た場合、七峰メソッドは工程管理(SPC)に優れていて、
漫画家1人でやるより効率的に作品を作る事に成功はしていましたが、
読者の声を拾い上げるシステムがこの時はまだ構築されておらず、
珠玉のアイデアが誰得状態になっていたと考えられます。

これを改善するには、品質管理(TQC)という別の手法によって、
顧客ニーズを専門的に分析する人達を50人の中に加え、
それぞれの能力に応じて人員を適切に配置する必要がありました。


引用:環境と品質のためのデータサイエンス

 SPC: Statistical Process Control
   → 品質のバラツキを管理し、品質向上に繋げる手法。
 TQC: Total Quality Control
   → 品質目標を決め、50人の総力を結集して管理する手法。


世界で最も有名なTQCは、トヨタ自動車の「カイゼン」です。
効率化の理念を、期間工や掃除のおばちゃんまで社内の隅々に浸透させ、
全ての社員が同じ目標に向かって継続的な改善を行っています。

七峰メソッドの問題点は、盛り込んだアイデアが顧客満足に繋がっていない事と、
アイデアの選定を七峰くん1人で行っていた事です。
これらをTQCの適用によって、具体的に「カイゼン」してみましょう。


―――


七峰メソッドに顧客の声を反映した管理図がこちらです。


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従来のシステムでは、七峰くんのお眼鏡に適う面白いアイデアであれば、
読者アンケートの結果に関係なく作品に取り入れられてきました。
これが原因で、需要と供給の不一致を起こしていたと考えられます。

新システムでは、読者アンケートの結果を分析し、
抽出された要因から導かれる改善案を基にアイデアの選定を行う事で、
生産リソースを無駄なく作品に伝えられるようにしています。
このように、PLAN→DO→CHECK→ACTIONの4段階のサイクルを
ぐるぐる回して継続的な改善を行い、品質向上に繋げる手法を、
それぞれの頭文字を取って、PDCAサイクルと呼びます。
アメリカの統計学者、エドワーズ・デミング博士が完成させて、
戦後の日本企業に持ち込んだ考え方です。

PDCAサイクルの中で最も重要なのは、CHECK=評価です。
成功要因(Signal)と失敗要因(Noise)をどれだけ正確に抽出できるかが、
このサイクルを円滑に回す為の分かれ道になります。
ですが安心、品質学には2つの要因(SN比)をパラメータ化して評価する、
タグチメソッドという魔法のような手法があります。
田口玄一さんという日本人工学者の方が編み出した秘奥義で、
これを使いこなせば、改善もスムーズに進みます。
どうせだからこれもPDCAサイクルに組み込んじゃいましょう。


七峰くんもいくら頭が良いと言っても、ただの高校生です。
彼にはブレーンが必要であり、それは漫画に詳しい50人()とかでなく、
いかにして品質=面白さを継続させるシステムを考え、
頭の良い七峰くんを納得させうる人材こそが望まれました。
なので、新人編集の小杉くんも、アプローチの仕方を間違えてるんです。
やり方が正しいとか間違ってるとか、主観的な話はどうでもいい。
七峰メソッドでは面白い作品が継続できない事を論理的に説明すべきでした。

もしも七峰くんがデミング博士のマネジメントシステムを導入していたら、
旧態じみた亜城木ごときの根性論には敗れたりはしていません。
ここからは道場主が七峰くんのアドバイザーとして50人の中に加わり、
勝利へのプロセスをシミュレートしていきましょう。


―――


サイコー 「ネットで意見してもらって作品を作るなんて…!」

シュージン 「作品は邪道でもいいけど、作り方が邪道じゃ駄目だ!」


七峰 「編集に頼ってるうちは、自信の無いアマチュアですよ…」


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サイコー「プロを舐めない方がいい、そんなやり方、いつか必ずボロが出る!」

シュージン 「お前を10週で打ち切りにしてやる!」


…(゚Д゚)ハァ?


七峰 「勝ち負けは結果です…新しい友情・努力・勝利を見せてあげますよ」


亜城木なんとかの前で啖呵を切った、我らが七峰せんせい。
さっそく仕事場でネットミーティングを行います。


nanamine >
 1話目、速報で2位でした


ta1 >
 1話目はあれでいい、勝負は2話目!

SUGI >
 おっ!編集経験者 ta1さん! どういうこと?

ta1 >
 大事なのは2話目で負けないこと
 亜城木が何か仕掛けてくるなら2話目と予想する



駄目だこいつら…早くなんとかしないと…


dojyo >
 2位じゃ駄目なんでしょうか(キリッ


SUGI >
 おっ!元新聞記者 dojyoさん!どういうこと?


dojyo >
 大事なのは現状を分析すること
 SN比の最適条件を尺度にロバスト設計しましょう

SUGI >
 お、おぅ


dojyo >
 アイデアは詰め込みすぎるものでなく…


こうして50人に品質学をレクチャーし、七峰せんせいの了解を得て、
話作りの上手い人は物語のアイデアを、編集経験者や私は情報分析をと、
人員をそれぞれの担当ごとに振り分けていきます。


dojyo >
 …という風に、SN分析によってアイデアの取捨選択をしていくんです

nanamine >
 なるほど、それなら客観的に判断できますね


SUGI >
 でも面白いアイデアなら積極的に取り入れた方が、
 順位は上がるんじゃないの?

ta1 >
 『H×H』の冨樫も言ってたな、アイデアは暖めておくって
 使えるネタをここぞって時に出す方がより面白いって事だろ


流石にみんな理解が早い…必要なアイデアを必要な時に必要な分だけ使う、
これぞトヨタ自動車に伝わる必殺技・ジャストインタイム!


dojyo >
 アシスタント14人に、アイデアマンとデータアナリストが50人、
 全員の総力を結集させれば、作品の質を継続できますよ

nanamine >
 よし、この方法で行きましょう!


くっくっく…亜城木め、ネットの力を舐めるなよ。


―――


亜城木夢叶


サイコー 「ええーーーーーっ!?」

シュージン 「本ちゃん4位!?」



服部 「2位の『有意義な学園生活に必要なソレ』に票を奪われている」


サイコー 「七峰くん、2話目で急に絵のクオリティが上がったんだよな…」

シュージン 「
それだけじゃない、3話目以降は詰め込みすぎの読み難さが無くなってる


それがTQCによる「カイゼン」の結果ですぜ。


七峰 「ご無沙汰してます、亜城木先生…フフフ」

シュージン 「…七峰くんっ?」

七峰 「ほぉら、僕が正しかった…こんな新人、過去に居ます?」

シュージン 「俺たちは、俺たちの『PCP』をしっかりとやっていくだけだ」


七峰 「フフ…亜城木先生は勘違いをされてるようですね」

サイコー 「何っ!」

七峰 「ネットの力を、50人の横の繋がりをね」


そう、亜城木コンビは最初から勘違いをしているんです。
ネットで見つけた50人を、統率の取れないバラバラの集団だと決め付けている。

なぜ七峰くんがネット上で漫画に精通した50人を見付ける事が出来たのか?
それは、この50人が何らかの情報を発信していたからに違いありません。
そしてそれらの情報は、同じコンテクストを持つ人達に共有され、
ソーシャルメディアを経由して横の繋がりを生むのです。
2chで面白発言してる人をテキトーに選んでるとか、そんな訳がない。

でもって彼らが発信する情報は、Noise要因が予め取り除かれています。
Signal要因だけを共有するリテラシーが、50人にはあるんです。
それぞれの価値観が違ったとしても、それぞれを理解し合う人達を、
統一された目標の下で適切にマネジメントしていけば、
大きな成功を得るのは、決して難しい事ではありません。
オウンメディアを活用する実際の企業運営と考え方は全く同じです。

真城くんはともかく、高木くんまでネット=2ch的なものだと思ってるのが、
道場主としては全くもって得心がいかないですね。 
玉石混交の「石」の部分しか見てないとしか思えません。 



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七峰 「どうせなら同じ話で勝負しませんか?簡単に白黒つくじゃないですか」

シュージン 「そんなの大問題になる、その挑発には乗れない」


サイコー 「…やろう、シュージン」

シュージン 「サイコー!? …まぁ編集長がOKすればいいけど…」

サイコー 「俺たちがこんなやり方に負けるはずない」


七峰 「僕には50人ものアドバイザーが居るんですよ?」

シュージン 「君にはそれを纏める力は無い、つーか誰だろうとそんなの無理」


誰かが纏めるんじゃねぇ、全員で纏まるんだ!
七峰せんせい、この青二才どもに正義の裁きを下してやりましょう。



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再びネットミーティングにて。


> しかし、ありがちな設定だけに難しいぞ

> 正攻法もいいけど大どんでん返し

> いかに華麗にカッコよく勝たすか

> 感動の演説とバックボーンになる出来事なんてどう



七峰 (みんな真剣に意見を出してる、これならいける…!)


いやいや、いけないから。


dojyo >
 それぞれの意見ももちろん大事ですけど、
 読者の声を分析した結果を基にアイデアを練りましょう

NARUTO >
 つまり…どういう事だってばよ?


dojyo >
 y=βMから得られるのは漫画の基本的性質である面白さですから、
 制御因子の水準値を変えて、読者との需要の誤差をマッチさせましょう
 
NARUTO >
 お、おぅ


take20 >
 俺が考えた先週のオチは上手くマッチしなかったもんな

nobuo >
 下ネタだったけどな


…こいつらはクビでいいんじゃないのかな


boss >
 なら、暖めておいたアイデアを使うのはどうだ?

SUGI >
 おっ!ジャストインタイム発動きたーー!

take20 >
 生徒会長に圧倒的不利な状況で立候補した生徒を勝たす話にするんだろ
 今の展開で使えそうなのがあったはず

nobuo >
 それならこれは…



七峰 (みんな真剣に意見を出してる、これならいける…!)


ついにTQCがここに成った…!
七峰せんせいの勝利も秒読み開始だ。

見ていろ少年ジャンプ…待っていろ亜城木夢叶!


―――


真城最高


服部 「…3位だ」

シュージン 「3位!?」 

サイコー 「『有意義』は!何位だったんですか!?」

服部 「…1位だ…見事だよ」


シュージン 「1位…そんな…」

サイコー 「敗北…破滅…挫折…、負けたっ…」

服部 「『PCP』に票を入れた人は、『有意義』の方も上位にして入れている」


本当にこの世は金と知恵ですね、亜城木先生。


実際のストーリーでは、七峰くんは亜城木コンビに惨敗します。
それは、七峰くん個人に原因があったのではなく、
やはり生産システム上に欠陥があったからだと思います。
逆に、システムに問題が無ければ、充分に勝つチャンスがあったと言えます。
道場主としては、やり方が間違ってるという結論で締めくくられたのは、
アンフェアであったのではないかと思っています。


このお話、後日談があります。原作では七峰くんが
「シンジツコーポレーション」という名前の漫画制作会社を設立して、
再び亜城木コンビの前に立ち塞がるのですが、
この会社ではモニターを雇い、読者の声を拾い上げるシステムにしてます。


で、シュージンの感想が前述のこれ↓

高木秋人


そう、今度のシステムは良く出来てるんです。TQC的に。
でも結果的に駄目だったのは、目標がはっきりしていなかったから。
 
「新世界の神になる」のが目的だったはずの夜神月が、
いつの間にか「Lに勝つ」のが目的となり、迷走していったのと同じ。
七峰くんは「亜城木に勝つ」事を目標にした時点で間違ってました。
「読者アンケート1位」を目指すべきだったんです。

PDCAサイクルも、導入すれば必ず成功する訳ではありません。
明確な目標、的確な分析は絶対条件となります。
単に計画を立てて実行するだけなら2ステップで済みますが、
形だけを真似るんだったら、余計な工数が増える諸刃の剣なんです。


しかし、おかしな点がありますよね…。

七峰くんが作ったのは紛れもなく「会社」なんですよ。
会社の経営目標がはっきりしないって、駄目でしょ、それ。

素人50人がやってる時はまだいいですよ。
でも、会社は事業内容を公表しなくちゃいけないんですよ。
実家がお金持ちだから銀行から融資を受けなくていいっつっても、
こんな所と一緒に仕事してくれるパートナー企業なんか見つかりっこねー。


シンジツコーポレーション

           諸悪の根源らしき、ひげのおっさん↑


名前が分からんけど、経営コンサルタントらしき人物も居ますよね…。
この人はいったい何をやってたんでしょうか。
私の目にはとても優秀な人物には見えませんが…。

つまり悪いのはこのおっさんだ。七峰せんせいは己が正義を貫いている。
このおっさんがプロの仕事をしなかったから、あんな目に…。

うんきっとそうだ、そういう事にしよう。


 結論: おっさんは死刑


七峰せんせいは正しいんだー。
それさえ伝われば、私は他に言う事はありません。
  


ご清覧ありがとうございました。

【ネタ考察】もしも乙女漫画の男子と萌え漫画の女子が付き合ったら

「女尊男卑」が叫ばれるようになって久しい昨今。

主体性を持った女性が、世の男性を客体として見るようになり、
また男性の方も、以前と変わらず女性を客体として扱い続けている事で、
両者の間に埋められない主客認識の溝を生んでいます。


漫画のキャラクターも同様です。

乙女チックな漫画では、女性にとって都合の良い男性が、
絶対に自分以外を好きにならない」という、ありえない現象がまかり通り、
逆に萌え漫画では、男性にとって都合の良い女性が、
絶対に彼氏を作らない」という、これまたありえない現象が頻発。
恐るべきは、これらの需要が漫画・アニメ作品の大部分を占め、
社会問題として挙げられる性の不一致の側面を捉えている事ですね。
(詳しくは少女漫画論、及び萌え論をご参照下さい。)


漫画ブログの先輩である紫様も、キャラの客体化についてこうおっしゃってます。
昔のラブコメ作品の主人公は確かに主体性を持ってたんですよね。
最近のラブコメ主人公は『密・リターンズ!』の主人公を見習うべき


では、乙女漫画に描かれる客体としての男子と、
萌え漫画に描かれる客体としての女子が付き合ったら、どうなるのか?

越えちゃいけないラインの向こう側にある、禁断の考察。
少女漫画研究家を自称する道場主が、ネタとして検証してみます。


【その他のネタ考察】
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 もしも『バクマン。』の七峰透がデミングサイクルを導入したら


―――


Case.1 ~『兄好』 高梨奈緒の場合

兄好


兄好』とは、『お兄ちゃんのことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ!!』の略。
ライトノベルで人気の『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』と並ぶ、
ストレートなタイトルと「妹」が結びついた、妹萌えの代表的作品です。
上のキャラクターが今回取り上げる妹キャラ・高梨奈緒

このケースにおける妹とは、何の取り得もないとされる「兄」を立てる為に存在する、
実に男性に都合の良い女性キャラクターの属性の事です。
『To LOVEる』の結城美柑なども作品例として挙げられますね。

ところが、少女漫画における兄キャラは違います。
平凡なのはむしろ妹の方で、兄は頭脳明晰、スポーツ万能で、
イケメンでモテモテなのになぜか妹にしか目が行かないシスコン属性という、
女性に都合の良い男性キャラクターである事が多いです。


高梨

こちらが奈緒の兄・高梨修輔。実に情けない面構えをしてます。
外見でもこれといった特徴も持たせてもらってません。アホ毛もないし。

行動も男らしくなく、妹の着替えをこっそり覗いたり、
同級生の女子にペットとして扱われたり、挙句の果てに土下座したり、
ここまで客体化してしまっては、男の立つ瀬もありません。



もしも、妹萌えの象徴である『兄好』の妹・奈緒に、
頭脳・体力・ルックスの3拍子揃った究極リア充の兄が居たら?
そんな理想的な人物が余っているのでしょうか。

実は…ちょうど良いキャラが居るんですよ。双子が兄として居たばかりに、
どちらかを選ばなくてはならない選択を迫られた妹作品が。
…そう、少女向け部門において第51回小学館漫画賞を受賞した、
そんなんじゃねぇよ』の極彩色の遺伝子こと、間宮ブラザーズです!

どうせだったら双子の片割れを奈緒にあてがっちゃいましょう。
そしたら間宮家の妹・間宮静の悩みも減って安泰です。

そんなんじゃねぇよ

まったくけしからん事に、双子のうちの右の方(間宮烈)は、
喧嘩っ早い熱血キャラという設定なのですが、いかんせん頭が普通な上、
第1話で静の同級生とHをしちゃうので、兄キャラの前提を覆しております。

純然な兄たる者、いかなる場合でも妹ひとすじでなければなりません。
なので今回は左の方、間宮哲とのカップリングをシミュレートしてみます。
しかもこちらは成績優秀のクールキャラですので、兄として申し分ありません。



間宮哲高梨奈緒

↑兄・間宮哲         ↑妹・高梨奈緒


おお、こうして並べてみると、お似合い…でもないなぁ。

顔のバランスが違いすぎてとても兄妹には見えませんが、
これも男女の客体性の違いが需要の差として顕れた結果なんでしょうね。
片や黄金比の大人顔で、片や白銀比のロリ顔。
高梨家でも間宮家でも血の繋がりはないという前提で話が進んでますから、
本当はこのぐらい違ってても不思議ではないんでしょうけど。


高梨奈緒は、いわゆるヤンデレで、隠れてこそこそ自分をオカズにする
兄・修輔の性癖を明るみにし、お膳立て通りに行動させる事で、
客体である修輔を自分の思い通りにする欲求を満たしています。
それに対し間宮哲は、仮にも兄妹として育った男女関係に思いつかえる
妹・静の判然とした恋心を、広い理解で受け止めてくれた上で、
自分の心は常に静に向いている事をストレートに静に伝えています。
つまり、両者とも主導権は自分にある訳ですね。

どちらの家でも、相手方となる修輔や静に自制心があったがゆえに、
妹萌えもシスコンもストーリーとして成立していた訳ですが、
果たして、お互いを受け入れ合った場合の兄妹関係はどうなるのか?

それではいざ、妄想スタートです。


―――


とある事から、本当の兄妹ではないと知ってしまった哲と奈緒。

妹・奈緒はここぞとばかりにエロゲーキャラと同じスク水&ニーソに身を包み、
入浴中の無防備な兄・哲の背後を襲います。


高梨奈緒

奈緒:「お背中 流しましょうか?」


間宮哲

哲:「…ああ、頼む」


あ…あれ?すんなり行ってる…?

ちょっと待て、哲も奈緒もデレ度100%に見えちゃうよ。



お風呂でスキンシップを果たした奈緒は、ついに一線を越えるべく、
哲の寝室を訪れ、哲の寝ている横に潜りこみます。

「血が繋がっていないなら、私がお兄ちゃんの事 好きでも当然じゃないっ!」
「兄とのキスも自然、兄とのHも自然、兄との結婚も自然っ!」


…若松家の某みゆきちゃんにも聞かせてあげたいですね。


奈緒:「本当はお兄ちゃんにしてもらうつもりだったんだけど―」

高梨奈緒

奈緒:「我慢も限界だからちょっとだけ味見させてね」


…ゴクリ。


哲:「…、奈緒…?」


…!

お兄ちゃん起きてた!


哲:「奈緒が俺に兄以上のことを望まないなら、邪魔になるだけだ」

奈緒:「…ううん、私はお兄ちゃんの事、もっと知りたい、ずっとそばにいたい」


間宮哲


奈緒:「お兄ちゃん…」

哲:「奈緒…」


奈緒:「スキって言ってくれるだけでいいから…」

哲:「好きだ」

奈緒「…うれしい」


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…なんだこれ。


おい、どこでどうなったんだ、普通の恋愛漫画じゃないか。

…あぁつまり、どんなに女性からお膳を立てられても、
超人的な自制心で我慢してやきもきさせるのが萌え漫画の本質だという事ですか。
「妹」ってのはその設定にぴったり当てはまるリミッターだったって訳ね。

据え膳食わぬは男の恥、どうやら乙女漫画の理屈を萌え漫画に当てはめると、
肉食同士お互いの思惑が一致して、どこまでもいっちゃうようです。


―――


Case.2 ~『こえでおしごと!』 青柳柑奈の場合

青柳柑奈


こえでおしごと!』…。よく見かける、ひらがなに!マークの付いたタイトル。
4文字に略していれば完全にテンプレ萌え漫画でした。
ありそうでなかった題材をかわいい絵柄で先んじて作品化するのが、
最近の漫画市場のトレンドですから仕方ありませんね。

この作品はエロゲー声優の仕事をやる事になった女子高生・青柳柑奈のお話。
頭に付けてるヘッドフォンと、手に持ってる台本がそれです。
この人物の特異性として、アフレコ(声あて)の際に「トランス状態」となって、
まるで本当にHしているかのような声を演じられるという才能を持っています。
というか本当に昇天しています。なにこの才能の無駄遣い。


海津正樹

で、こちらがそんな柑奈に密かに想いを寄せる、同級生の海津正樹くん。
エロゲー会社の御曹司であったゆえに、柑奈との距離を縮めるのですが…。

見た目通りの軟弱貧弱ゥで、母親から「ヘタレ」と言われてしまうほど、
柑奈にちゃんと告白をする機会を棒に振り続けています。
それどころか、トランス状態に入った柑奈にどれだけおねだりされようが、
おろおろ戸惑ってばかりで何ひとつ反撃を試みる事が出来ません。
『いちご100%』の真中淳平タイプですね。南ちゃんでもイライラするレベルでしょう。



やはり男子たるなら、女子の春機発動の機会を読み取り、
適確なリードをしてくれるたくましさと甲斐性が無ければいけません。
相手がたとえ、演技のプロである女優であっても、
巧みに隠されたオンナの匂いを嗅ぎ付けるくらいカンの鋭さがあっていいはず。

乙女漫画界には、そんな女優を商品として扱う、オンナ転がしのプロが居ます。
そのお方こそ、大都芸能社の若きプリンス・速水真澄さま!


速水真澄

見てください、この自信に満ちた横顔と、全身から漂う色気。
彼こそまさに男子の中の男子、キング・オブ・男子に違いありません。

ガラスの仮面』の世界では、長く業界に浸かった有名な監督や俳優ほど、
素人でも分かる演技力を理解できずに嘲笑する傾向にありますが、
真澄さまの御心は模型飛行機を飛ばして遊んでらした少年の頃のまま。
磨き抜かれた鏡のようにピュアでいらっしゃいますし、
しかも大都芸能の影響力は業界一ですから、柑奈の声の演技も、
社長である真澄さまの秀麗なるお耳に届いているはずです。

たしか真澄さまの傍らには、北島マヤとかいうめんどくさいじゃりん子が
図々しくも居た気もしますが、一流女優である柑奈と、
どこの馬の骨とも分からぬ三流女優とでは比較になりません。
下宿のラーメン屋で一生働かせておきましょう。


 
速水真澄  青柳柑奈
↑社長・速水真澄       ↑女優・青柳柑奈


ううむ…やはり絵柄が違いすぎる。
これほどまでに男女の需要のギャップは大きいものなのでしょうか。

青柳柑奈は、持て余したエロ衝動を開放させる客体として
同級生の海津くんにターゲットを絞り、なすがままの実験台にしてきました。
しかしながら、今度の相手は百戦錬磨の芸能社社長。
速水真澄は冷血漢で知られた人物であり、女優を商品としか見てくれません。
柑奈のアプローチは、おおよそ通用しないと思われます。
今回のケースも、ポイントはお互いの主導権争いにあるのです。

ともあれ、まずは2人をくっつけるべく、柑奈にはブルーマーチ社から
大都芸能社に移籍してもらいましょうかね。

さぁ果たしてどちらが先に公私の一線を越えてしまうのか、
再び、妄想タイムの始まり、始まり。


―――


大都芸能に移籍してきた新進気鋭の声優・柑奈。

社内の片隅にあるアフレコの現場を、たまたま通りかかった
社長の真澄さまが、お忙しい中でも覗いていかれます。


青柳柑奈

柑奈:「あ…あ…!」

(みんなが…見てるのに… セリフ…次のセリフ言わなきゃ…)

柑奈:「うん…すごく…気持ちよかった…です…ぅ…」


速水真澄

真澄:「じい…!このわたしが誰かのファンになるのはいけないことだろうか?」


…真澄さまっ?

どうかお気を確かに。相手はエロゲーの声優ですよ。



全力でご乱心の様子であられる真澄さま。
その足で花屋へと立ち寄られ、両手いっぱいの紫のバラの花束をご購入、
わざわざ柑奈の為だけに楽屋の前にお越しになりました。


速水真澄

真澄:「フッ…しかも10いくつも年下の少女に…」


正気に戻られたのか、柑奈にはお会いにならず、
花束と一緒に手帳から破り取った直筆のメモを柑奈の台本の上に置かれ、
そのまま立ち去られます。なんという奥ゆかしさでしょうか。


楽屋に戻ってきた柑奈。すぐに台本の上のものに気が付きます。


紫のバラの人

柑奈:「紫のバラ…!」


紫のバラの人青柳柑奈

柑奈:「…!」


紫のバラの人

柑奈:「 怖っ…!」


…え?


「柑奈ちゃん、どうしたの?」


「あたしの机にこんなものが…グスッ」


「え…なに?」

「…うわっキモっ!



「ううう…」

「きっと声ヲタの仕業だね、放っときなよ」

「そうよ、私達がついてるわ」

「うん…ありがと…」


 GAME OVER




…こんなはずでは。


これじゃただの、声ヲタドキュメンタリーじゃないか。

そうだ…そうだよ、真澄さまは自信あり気に見えて、
実は肉食の皮をかぶった草食男子だという事を忘れていました。
雨宿りに立ち入った古寺で北島マヤと一晩を過ごしても、
OKサインを見過ごして、寝顔のキス1つで済ませた人でしたね…。

男女の間では、下手にかっこつけて遠まわしのアプローチをしたりしても、
絶対に距離は縮まらないという事を改めて思い知る結果となりました。
男なら全力の直球勝負、女はタイミングを見計えばばっちこいです。


―――


第2回目のネタ考察、いかがだったでしょうか。

道場主は真面目な考察よりむしろこっちの方が真骨頂なので、
これからもこういったネタはシリーズ化して続けていくつもりです。
またお暇な時にでも足を運んで下さいませ。

それでは。
 



ご清覧ありがとうございました。

【ネタ考察】もしもIQ80の引きこもりが夜神月の『DEATH NOTE』を拾ったら


夜神月

↑第1部のあなたは輝いてました。


【その他のネタ考察】

 もしも乙女漫画の男子と萌え漫画の女子が付き合ったら
 もしも『バクマン。』の七峰透がデミングサイクルを導入したら


さて、今日からからネタ考察をスタートします。
第1回は『DEATH NOTE』。もはや上の画像だけでネタだと分かりますね。

今回の考察の目的は、夜神月の敗因を明らかにし、対処策を打ち出す事です。
なぜ頭の回転の早かった月が、いとも簡単に他人に出し抜かれたのか?
そこには月自身も気付いていない、大きな落とし穴がありました。


―――


まず、夜神月が敗北に至るまでの行動を振り返ってみましょう。


Lに勝利した月は、2代目Lに成りすましてそのまま警察に居座り、
その裏でキラとしてノートによる殺人を続け、世界から崇拝される存在となりました。
キラを熱烈に崇拝し、神と崇める検察庁検事の魅上照は、
月の高校時代の同級生だったMHNの看板キャスター・高田清美を通じて、
国際警察にマークされて身動きの取れない月に2冊目のノートを渡され、
キラの代行として、自身が考える悪を削除していきます。

ところが、高田も魅上も、Lの意志を受け継いだL陣営にマークされており、
高田は単独行動を取っていたLの後継者の1人・メロに拉致され、
魅上は証拠隠滅の為にノートを使って高田を殺しますが、
その行動はもう1人の後継者・ニアによって監視されていて、
2冊目のノートはL陣営の手によって押収、および複製されていました。

いざ月とニアとの対峙の時。月は殺人実行役の魅上に指示を出し、
現場に居揃ったL陣営を全員殺そうと画策します。
偽物のノートをめぐる月とニアの策謀があれやこれやとありますが、
本物のノートは既にニアに押えられていて、月の策は失敗します。
ニアに敗れた月は殺人の証拠を押さえられ、ついにキラである事を自供します。
月にノートを渡した死神・リュークは、自暴自棄になった月を見限り、
月の名前を自分のノートに書いて、キラは最期を迎えました。


夜神月

↑あり得ないのは第2部のあなたです。


デスノート、死神、死神の目を持つ協力者と、圧倒的なアドバンテージを持ちながら、
ついにはL陣営に敗北を喫した夜神月。その行動には疑問があります。

まず、直接の敗因となったのは、2冊目のノートがニアの手に渡った事ですね。
そして、ノートが押収される原因となった魅上の行動にも行き当たります。
本物のノートが複製されてさえいなかったら、直接対決の際、
L陣営は死神の目を持つ魅上によって全滅させられていたでしょう。

では、魅上が複製を許していなかったら、勝敗の決着は変わっていたでしょうか?
いいえ、そうはなりません。L陣営は既に月の周辺を固めていました。
いずれの方法を取っても、ノートを押収されるのは時間の問題であったのです。

つまり、月は背後にあった人間関係をL陣営に気付かれる前に、
ニアと決着を付ける必要があったという事です。


―――


しかし、そんな事が可能な状況ではありませんでした。
そもそも月が魅上にキラの代行をさせたのは、自分の身に捜査が及んでいたからで、
そうなる原因を作ったのは、これまで月がキラとして行ってきた行動の中に、
月とキラを結びつけるいくつかのヒントがあったからです。

これらを現状として捉えた場合、疑われていると分かっていたはずの月が、
デスノートの管理において、最善策に溺れてしまい、
次善策を用意しなかった事が、ニアに付け入る隙を与えたと言えます。
つまり、敗因は月が行ったノートの管理の仕方にあるのです。

ノートを保管する机の引き出しに細工をしたり、追加で13日の嘘ルールを作ったり、
当初はノートが他人の手に落ちた時の想定を考えていました。
ところが、第2部の頃からうかつな行動がやたらと目立つようになります。
第1部ではあれほどノートの管理に慎重に慎重を重ねていたにも関わらず、
どういう訳か第三者に簡単に渡すようになりました。


第2部スタートの段階で、月の手元には3冊のデスノートがありました。
最初にリュークが持ってきて、シドウに返した1冊目のノート。
ジェラスが海砂を守る為に使い、その後も海砂が使い続けた2冊目のノート。
そしてレムがLを殺す時に使った3冊目のノートですね。

あろう事か月さん、これら3冊全てを1度は他人に渡してます。
馬鹿なの?死ぬの?テラアホスなの?


ターニングポイントは3つあります。

まず、妹の夜神粧裕がメロに誘拐された時、身柄引き渡しの条件として
メロから提示されたノートとの交換に応じた事ですね。
デスノートは、23日間だけなら死に繋がる行動を操れます。
ゆえに、邪魔になった妹を混乱に乗じて殺害するのも容易だったはずです。
ノートの保持はキラである事の存在証明であり、何よりも優先されるべきでした。
ところが月はあっさり交換に応じてしまいます。マジどうしちゃったのよ。

月の信念として自分の家族を殺す事に躊躇があったと語られていますが、
結局これがきっかけで、死神とノートと嘘ルールの存在をL陣営に知られてしまい、
この時点で月が持つアドバンテージが月の協力者以外に無くなります。


次に、粧裕を誘拐したメロから1冊目のノートを取り返す時に、
レムから苦労して奪った3冊目のノートを捜査本部に提供した事です。
いくら致し方なかったとは言え、そもそも1冊目を相手方に渡していなければ、
こんな事しなくて良かったはずなんですけどね。

もはやこの頃には月の策謀がと言うより、キャラが崩壊してきてます。
出たとこ任せの行きあたりばったりな人へと足を踏み入れてます。


最後に、協力者となる人物に第三者を選んだ事です。
ノートに名前を書くだけなら、高田1人を協力者に選ぶだけで良かったはずで、
高田に捜査が及んだ段階で第三者という選択肢を取れば良かった。
もっと言うならプリンターを使ってPCで自動更新という手もあったんです。

いくら状況が窮していたとは言え、キラの代行として魅上を選ぶのはあり得ません。
なぜ何の接点も無い人物に、いきなり自分の切り札を預けるのか。
この1点においてだけでも、月は決して頭の良い人物ではなく、
策に弄してその場しのぎに右往左往するだけの小心者に成り下がってます。



では、どのように対処していれば月は勝利できたのでしょうか?
ズバリ、ノートを自分の手の届く範囲で確実に保管しておく事です。

1冊目はシドウに返しますから、手元に残るのは2冊目と3冊目です。
もちろん、誘拐された妹なんて絶対に助けません。
世界の創造主たるキラ様が、私情を挟んでは大事を成せませんから。

その後、2冊目のノートを使って裁きを下していく事になりますが、
ニアの捜査は厳しくなってきますから、これは筋書通り、魅上に預けて良いです。
むしろ、ニアにノートの複製を作らせるオトリとして使えます。

さぁここからがポイント。いざニアとの決戦場へ向かいますが、
この時、魅上に保管させておいた2冊目のノートではなく、
自ら保管していおいた3冊目のノートを使います。
これは海砂に書かせます。
L陣営の皆様は3冊目のノートがある事なんて全く知りませんし、
決戦場となった倉庫には外に見張役すら置いてません。
想定外の切り札を切られたニアは、完全にオワタツンダ状態です。

はい、この通り。月がL陣営に勝つ道筋が出来ました。
切り札ってのはこういう風に使うもんですよ(まぁ結果論ですけど)。


―――


夜神月が敗北に至るもう1つの原因は、相手の思惑に乗りすぎた事です。
これはLの挑発に乗って、リンド・L・テイラーを殺した所から始まっています。
月の目的は「新世界の神となる」事であり、「Lに勝つ」事ではありません。
なまじ頭が良すぎた為に、目的以外の事に突っ込みすぎたのが、
今回は触れなかった、敗因の大きな背景としてあります。

もちろんこれを認めてしまえば、『DEATH NOTE』である前提も、
月が主人公である意義も無くなりますので、ここから先はネタとして考察します。


『DEATH NOTE』の主人公が夜神月では無かったら、
もしもノートが、そこら辺に居る有象無象の手に収まっていたら?
と言うか、普通はその可能性の方が大きいんですが、
はたしてどのような変化がストーリーに生まれていたでしょうか。

シドウを騙くらかしてデスノートを手に入れたリュークは、
退屈しのぎにと人間界にこれを落としていきます。
で、ノートをたまたま拾ったのが、たまたま全国模試トップの頭脳の誇る、
後に日本で最高峰の大学に全教科満点の主席合格をする夜神月だった事で、
話がここまで大きくこじれちゃった訳ですね。

どうせだったら凡百どもよりさらに底辺の、
どうしようもない負け組ニートに拾ってもらう事にして、
夜神月の敗因から明らかになった問題点を修正してもらいましょう。


【主人公】

・月並 平(ツキナミ タイラ) 32歳。
・無職、独身。
・ニート歴10年のプロニート。
・IQ80、高校中退。



やだ…何て斬新な設定でしょう!
こんな作品がかつてこの世に存在したでしょうか。


さて、1年ぶりにハローワークに行った帰りにデスノートを拾った月並くん。
道中で渋井丸拓男、略してシブタクなるDQNからカツアゲに遭い、
その怨恨から家に帰ってシブタクの名前を試しにノートに書き散らします。
するとびっくり、風呂上がりにPCを立ち上げたら、
シブタク死亡のニュースが2chに流れているではありませんか。

「デスノート…本物だ!」

自分をゴミのように扱ってきた世間を見返してやる為に、
デスノートを使って粛清を行い、「新世界の神」となる事を決意します。

…途端に中二臭くなってきましたね。


この頃、謎の大量死に疑念を持ったICPOの探偵・Lは、
TV放送を通じてキラの居場所を突き止める策を実行します。
しかし月並くんはネットに夢中。挑発に乗らないばかりか、TVすら見てません。
マスコミは捏造報道しかしないので、現実をネットに求めていたからです!

2chにはリンド・L・テイラーに関するスレッドがぽつぽつ立ちますが、
それより憎き韓国・中国の反日デモの方が大事件なので、
愛國戦士である月並くんは優先順位に従ってデモの主催者を粛清し始めます。

ネットには次々と倒れていく主催者を写した画像がうpされ、
「天罰www」とか、「ざまあぁぁぁwww」とかのレスが並び、
裁きの鉄槌を下した見えない力に、「ネ申」という賛辞が送られるようになります。

「デスノートで、世の中を変えてやる(キリッ)」

終始ご満悦の月並くんです。

月並くんの決意表明と時を同じくして、第2のキラ・弥海砂が現れますが、
コンビニでエロ漫画を立ち読みする月並くんを見て幻滅し、
2人の接点は生まれる事なく、そのまま時は流れます。


―――


しかし、キラの影を追うLも馬鹿ではありません。
キラの犠牲者が2ch勢いランキングで上位に報道された人物に偏り、
しかも昼間に多い事から、容疑者を日本に居るキモオタニートと断定。
さらに嫌韓や嫌儲掲示板にターゲットを挑発するスレッドを立て、
レスした人物のIPを管理者に開示するよう要求します。

その策に月並くんは見事に引っかかります!
それが釣りである事も知らず、コピペAAを張り付けた月並くんは、
IPをぶっこ抜かれ、容疑者の1人としてマークされるようになります。


けれどLの方も、ミスを犯してしまいます。
やらなくてもよいネタばらしを再度スレッドを立てて公開し、
それと同時に、わざわざキラへ挑戦状を叩きつけます。

どちらにしろ月並くんはもうびっくり!

「くそっ、やられた!」

これによりLの計画が月並くんの知る所となり、
月並くんは警戒して情報入手先をまとめブログに変えてしまいます。


月並くんは未だかつて、自信というものを持ち得た事がありません。
ゆえに、月並くん(普通の人)の考えうる「正義」とは、
他人との折衝ですぐにしぼみ、揺らいでしまう程度のものです。

「必ずお前を探し出して始末する!」とはなりません。

月並くんはLを避け、更に自分の居心地の良い場所へと潜んでいきます。
こうして、Lとの接点も無くなり、Lの捜査は行き詰まります。
捜査の生命線である守秘情報を漏洩したのですから、自業自得ですね。



それからしばらくして、海砂が芸能界デビューし、上京してきます。
海砂のロリフェイスと男心をくすぐる仕草は、
「ミサミサ (*´д`*)ハァハァ」と、ネットでもすぐに話題沸騰となり、
月並くんも海砂の虜にされ、ブログ愛読者になります。

ところが、トップアイドルの道を駆け登っていたミサミサに、
思わぬ大スキャンダルが発覚します。
頭脳明晰で街角モデルとしても人気の東大生・夜神月氏との
お持ち帰りデート&裸でツーショット写真がスクープされたのです!

「駄目だこいつ…早くなんとかしないと…」

海砂の熱心なファンだった月並くんは、デスノートを使った
夜神月の排除を企て、海砂のブログに月の殺害予告を書き込みます。


ですが、これが月並くんにとって命取りでした。
ミサのブログはスキャンダルで大注目されてる真っ最中で、
そんな時に悪意のコメントを付けたのですから、すぐに通報祭りになります。

月並くんのIPは特定され、日本の警察に逮捕されます。
その後の家宅捜索で、『DEATH NOTE』と表題の付いた黒いノートに、
今まで不審な死を遂げてきた人物の名前が書かれている事も判明し、
ワイドショーで恒例のオタクバッシングが始まります。

なお、月並容疑者は警察の取り調べにおいて、

「悪は悪しか生まない。まだ世の中は腐っている。
 腐った人間が多すぎる。ならば、なくさなければならない。」

などと意味不明の供述をしており、動機は未だ不明です。
捜査当局では、キラ事件との何らかの関与がある可能性もあると見て、
慎重に捜査を進め、余罪の追求を進めていく方針です。


…結局負けるんかいぃ!


―――


最後に、道場主の『DEATH NOTE』観について。

この作品は、『ドラえもん』の構図とよく似ていると思います。
異なる世界から便利なアイテムを持って現れた異邦者。
それを使って願望を叶えていく主人公の男の子。
ドラえもんのひみつ道具を悪用したらどうなるかという、
誰もが1度は考えた事のある疑問を、実際にシミュレートしてみた訳ですね。
「ムカつくヤツを消したいな」「はい、デスノート♪」の世界です。


『ドラえもん』にも、"どくさいスイッチ"というひみつ道具があります。
嫌いな相手を消す事の出来る、悪魔のスイッチです。

どくさいスイッチ

↑どくさいスイッチ。夜神月の思想と重なっている。


のび太はまずジャイアンにいじめられた仕返しにと、ジャイアンを消し、
次に2番目に強いスネ夫にいじめられたら、スネ夫を消し、
こうして次々と自分より強い者をスイッチで消していったのび太は、
最後は独りになってしまうというエピソードです。

しかしこの話には救いがあり、実はこのひみつ道具、
全て幻の出来事で、道具を使った相手を戒める狙いがあったのです。
そしてのび太はドラえもんの思惑通り、自分を恥じました。
ここが、『DEATH NOTE』の月とは異なる点ですね。

夜神月の思想は、諫めてくれる人物が周りに居なかったというだけで、
根本的にはいじめられっ子であるのび太と同じです。
マジョリティに対するマイノリティが、中二病をこじらせた話。
だからこそフォーマットを転用して月並くんのネタ化も出来る訳です。
ただ1つ違うのは、月の信念は並大抵のものではなく、
マイノリティである事を恐れず、むしろ誇りとしています。

これは想像ですが、もしも月が孤独である事を恐れていたら、
月の存在意義は一般大衆と同化し、Lの捜査を振り切っていたかも知れません。

月は自分を顕示する事でL陣営に特定され、敗北しています。
ゆえに、自己顕示を早い段階で止め、新世界を作る目的に専念していれば、
月はせっせとノートに名前を書いていくだけで、勝つ事が出来た。


『DEATH NOTE』は、月を揺るぎない正義を持った人物として描き、
純粋な知能戦だけを楽しめるように作られています。
特に月の悪役っぷりは見事なもので、ラストシーン以外は
決してブレない"悪"を描ききっていると思います。
第2部ではその知能戦がなりを潜め、アクションシーン満載だっただけに、
月の落ちぶれっぷりを含めて、少し残念な気はします。

その後、『バクマン。』でも七峰透なる頭脳キャラが出てきて、
まるでヨツバグループを彷彿とさせるような合議制を唱え始めますが、
『DEATH NOTE』で一度やり尽くしたネタを繰り返してますから、
ここも少し蛇足であったでしょうかね。

いずれにせよ、『DEATH NOTE』は1つの記事に書き尽くせないほど、
漫画の魅力が詰まった作品である事は間違い有りません。
今もこうして妄想を続ける読者が、ここに居るのですから。

私がドラえもんにお願いするなら、"木こりの泉"を出してもらって、
悪い人をみんな、きれいなジャイアンみたいにしてもらうかな。

きれいなジャイアン

↑きれいなジャイアン。
 


ご清覧ありがとうございました。

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    ・2012年4月
     LivedoorBlog開設
    ・2012年11月
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    ・2013年1月
     総訪問者10万人達成
    ・2013年8月
     火垂るの墓の考察記事が検索1位に

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