↑「宇宙キタ━━━!!」にはきちんとした理屈と意味がある。
【平成仮面ライダーシリーズの考察記事】
龍騎 555 フォーゼ ウィザード
9月から始まる次の仮面ライダーの名前が、
『仮面ライダーウィザード』に決まってるそうですね。
毎年この時期になると、少ないメモリを搭載した私の頭の中は、
「次はどんな難しい学論をテーマにするんだろう」という妄想で占有されます。
魔法使いだよね…? 科学の分野で"魔法"と言えば、
ノーベル物理学者のメイヤーとイェンゼンの2人が提唱した
"魔法数(マジックナンバー)"が頭に出てきますが…果たして?
で、何でこんな妄想をいきなり始めるかと言うと、
これまでの平成仮面ライダーシリーズでは、
毎年必ず、何かしらの難しい学論を背景にしたストーリーを
子供にも分かるレベルに落とし込んで提供し続けてきたからです。
私が確認している限り、少なくとも『龍騎』の頃から。
先日アップしたクールジャパン論でも、こういった事を書いてます↓
> アニメやゲーム、その他映像作品についても同様で、
> 日曜の朝に放送される子供向けの仮面ライダーやプリキュアにまで、
> 相対性理論などの難しい学論や、黒沢明が使用した映像表現を、
> 子供でも簡単に見れるレベルにまで落とし込まれている事は、
> それぞれのファンから毎年のように指摘されている。
> 知らないのは、ハイカルチャーこそが日本の正統文化だと信じてやまない、
> サブカルチャーを子供のものと決めつける大人だけなのだ。
さて、こんな事を書いた以上は根拠を示さなくてはなりません。
でないと当道場の全ての記事が「脳内ソース乙」と言われかねない。
という訳で、今回は平成仮面ライダーシリーズが、
いかに知的好奇心をくすぐる私好みの作品群であるかという事を、
具体的に証明してみたいと思います。
…ええ、誰得とか気にしませんよ!
―――
早速ですが、引用元の記述にある、「相対性理論」を背景にした
仮面ライダーって、いったいどのライダーの事でしょう?
カンの良い方はお分かりのはず、『仮面ライダーカブト』の事です。
「天の道を往き、総てを司る」「俺が正義」のキャッチコピーの作品ですね。
個人的には「俺が正義だ」と聞くと、ブラジル国歌と言われる
アイ高野さんのあの歌の事を思い出します。
『カブト』では、サナギ形態のマスクドフォームから
成虫形態のライダーフォームにキャストオフ(脱衣)した時、
周囲の時間が止まっているかのように高速で動けるようになります。
これが「クロックアップ」の状態です。
物体が高速で移動するほど、周囲の時間の流れは遅くなる事は、
相対性理論の基本的な定義として知られていますよね。
『カブト』はこれを演出として表現し、エンターテイメントに変えています。
「ハイパークロックアップ」の状態になると、
今度は過去や未来など、時間を越える事が出来るようになります。
SFなんかでよく出てくる、いわゆる超光速理論が基になってます。
こないだの名古屋大のニュートリノ実験でも話題になりました。
とまぁこのように、カブトの超現実的なかっこよさは、
きちんとした現実の理屈に基づいて作られているんですね。
―――
そこから更に発展させたのが、『仮面ライダー電王』です。
『電王』の基になったのは、相対性理論の公式の矛盾点を証明した
車椅子の偉人・ホーキング博士の「特異点定理」です。
相対性理論には「アインシュタイン方程式」という公式があります。
アインシュタインはこの方程式により、超光速理論を、
つまり時間を越えるのが不可能である事を証明しました。
しかしホーキングは、アインシュタイン方程式の定数の部分に
∞(無限大)と0(ゼロ)を代入し掛け算した場合において、
鉄板の公式で得られる解が成立しない事を証明しました。
これが、ブラックホールとホワイトホールの存在です。
主人公の野上良太郎は、ブラックホール(∞)という特異点に当たります。
あらゆる運命を呼び込んでしまう体質の持ち主として描かれてます。
数々の不幸な目に合うのも、イマジンを憑依出来るのも、ブラックホールだからです。
もう1人のライダー・桜井侑斗は、ホワイトホール(0)という特異点です。
そして、あらゆる運命の束縛を受け付けないという設定。
だからゼロノスという名前な訳です。ゼロに何を掛け算してもゼロのまま。
彼らが時間を越える事が出来るのは、相対性理論で定義された
アインシュタイン方程式に当てはまらない存在だからです。
『カブト』は"料理"という設定までは上手くストーリーに落としこめてませんでした。
当時はまだ制作者も方向性を模索してる状態にあったからだと思われます。
しかし『電王』は、"電車"という設定を非常に上手く落とし込んでます。
おおよそ、この頃から同シリーズの新たな方向性が決まったのでしょう。
―――
そしてこの方向性が完成の域に到達したのが、
ダサかっこいいと評判の『仮面ライダーフォーゼ』です。
『フォーゼ』のキーワードは「重力」です。
カブトや電王の時と違って、時間の流れは絡めてません。
地球や月など、宇宙に浮かぶ星々には重力があって、
月の重力は地球の6分の1である事が知られてますが、
実は人間の中にもすっごく微弱な重力があり、
人間同士で引かれ合ってる事はあまり知られていません。
そもそも重力って何かっていうと、電気伝導から生まれるプラズマに起因する、
超強力な磁場の事であると考えられています。
地球も人も物も、電気を帯びた1つの磁石みたいなものなのです。
これが、ノーベル物理学者のアルベーン博士が唱えた、
現代の宇宙学を支える「プラズマ宇宙論」という考え方です。
ピーンと引っ張った布の真ん中にボールを落とすと、
ボールを中心に布がズドーンとたわみますよね?
この時のボールが重力で、布が磁場に当てはまります。
『フォーゼ』では、アメリカンスクールのヒエラルキーを採用し、
階層に定する人間関係が強調されて描かれていますが、
人間関係が重力で、階層が磁場を表してると考えて下さい。
スイッチを押すと磁場が変わり、重力がこじれ、
階層がめちゃくちゃになるという設定になってます。
だけど宇宙に行くと人間を縛り付ける重力が無くなるから、
こじれた人間関係が平滑なものになるって話ですね。
フォーゼが変身した後、宇宙キタ━━━!!って言うのは、
異常な重力を元に戻せる宇宙の力(コズミックエナジー)が来たって意味で、
友達になった人が月面基地に通じた仮面ライダー部に入部するのも、
歪んだ磁場が元通りの真っ直ぐになったって意味でしょう。
重力と人間関係を結び付け、ここまでの広がりを生み出したのは秀逸です。
コズミックエナジーとは即ち、プラズマを操作する力の事です。
大槻教授みたいな話になってきてますが、大体は理解して頂けたと思います。
で、私がこれを書いたのは、第4話の時です。
そしてこの時、こうも書いてます。
> これから謎の敵の目的が明らかになっていくでしょうが、
> ゾディアーツ=黄道帯を名乗るという事は、
> 地球の磁場に影響を及ぼしている"太陽"が絡んでいると、
> 私の観察眼をもって予言しておきます。
フッ…私のラプラスの瞳が当たってしまいましたね。
敵の親玉である天ノ川学園理事長・鶴見辰…我望サマが、
"太陽"に例えられるシーンがあったかと思います。
要するに我望サマはプラズマをいじくり倒して遊ぶ事の出来る、
地球の重力の支配者、まさに"太陽"な訳です。
余談ですが、『電王』の時は第1話の時点でゼロノスの存在に感付きました。
何の学論に基づいているのかさえ気が付いてしまえば、
かなり早い段階でストーリーの予測が出来るのもこのシリーズの特徴です。
脳内ソースと言われない為にも、『仮面ライダーウィザード』では、
より完璧に設定とストーリーを解き明かしてみせましょう。
…天気予報並みの精度ですけどね!
―――
とまぁこのように、歴代の平成仮面ライダーシリーズは
とても難しい学論を、子供にも分かるレベルにまで落とし込んでいるのです。
ここで挙げたのはほんの一例に過ぎません。
きちんとした背景を持っているのは『フォーゼ』だけではありません。
同じスーパーヒーロータイム枠の『特命戦隊ゴーバスターズ』もそうです。
この作品は現在の日本を揺るがすエネルギー問題をテーマとして扱っていますが、
作中で描かれる「13年前の事件」とは、西暦で言えば1999年の事であり、
この年に起きた、我が国で初めて死者が出た臨界事故、
東海村のJCOの原発事故を暗示していると見られるのです。
私はこういう裏があるのを知ってるので、日曜の朝に早起きする大人を、
「子供っぽい」とは思う事が到底出来ません。
逆に、こういう裏がある事を知らずに「子供っぽい」と軽視する人を、
私は良い大人としては信頼しません。
もし時間がおありなら、気になるシリーズを頭から再観して、
どんな学術的テーマを扱っているのか、確認してみるのも良いかも知れません。
追記:
この記事を書いた翌日に、『ウィザード』の公式発表がありました。
発表から得られた情報を統合し、当道場では6月27日時点で、
テーマはカルディア占星術、バックボーンはケプラーの法則と予測。
答え合わせとさらなる予測は、9月2日に行います。
ご清覧ありがとうございました。
すごいですね。
ちなみファイズが好きなんですが、学術的には何が当てはまるんでしょう?