ドラゴンズドグマ


絶賛誰得プレイ中の話題作『ドラゴンズドグマ』について。

『Dragon's Dogma』のタイトル名を見て、まず初めに思ったのが、
「これ海外から反発を受けるんじゃないか」という事。

発売から半年前、海外の反応を調べてみたら案の定、
「タイトル名に違和感を感じる」というコメントが至る所で散見されました。


私は格式を重んじるミッション系の大学を出ているので、
この違和感の正体が何であるか、すぐにピンと来ます。
ところが、日本では違和感を感じる人はあまり居ないようです。

このゲームのタイトル名を直訳すると、「竜の教義」となります。
教義(dogma)とは、キリスト教で言う所の神の教えを明文化したもので、
神とはもちろん、唯一神(God)の事を指します。
一方、竜(Dragon)とは、忌み嫌われる存在とされる蛇に翼を付けて神格化した、
邪悪の象徴、ぶっちゃけて言えば悪魔(satan)の事です。

要するに、外人さんの中でも教条主義の方からすれば、
「竜(dragon)の教義(dogma)とは何事か」と言いたい訳です。
彼らにとっての教義は、そんな軽々しく扱って良いものではない。
存在を疑ったり、議論すべきではない、権威の対象です。
しかもそれを邪悪な竜と同列に語る事などありえない、あってはならない冒涜です。
違和感の正体が、何となくピンと来たのではないでしょうか。

こういった反発を回避するのだったら、タイトル名は
Dragon's Doctrine(竜の教理)とでもすべきだったでしょうが、
制作したカプコンからすると、どうしても教義(Dogma)という言葉を
選択的に使う必要があったと私は見ています。


こういった観点から、今回はいつものネタ日記から趣向を変えて、
『ドラゴンズドグマ』に込められた制作者のメッセージを、
どオタク的に考察していこうと思います。

なお、ここで挙げる宗教的定義は、あくまでこのゲームを
客観的に理解する為の手段として挙げるものですので、
実際に用いられる定義とは異なりますし、そもそも私の家は檀家です。
敬虔なクリスチャンなら、ミッション系大学に通った4年間を
漫画研究にあてるなんて事はやらんでしょうね。


―――


さて、『ドラゴンズドグマ』がどういったストーリーなのかを、
ここで一度、おさらいしてみましょう。

以下、スーパーネタバレタイムになりますので、閲覧にはご注意を。
充分に換気し、部屋を明るくして離れて見て下さい。



…よろしいですか?



では、解説していきます。



まず、このゲームはキリスト教義のメタファー(隠喩)が使われています。

・ ドラゴン = 神
・ 覚者   = キリスト
・ ポーン  = 聖霊


漁師だった主人公は、カサディスの村に現れたドラゴンによって、
為す術なく心臓を取り出され、1度、死に至ります。
しかしその後、ドラゴンの声に導かれるように"覚者"として復活します。

聖書にはアダムとイブが神の禁忌に逆らった"原罪"を、
キリストが死をもって贖い、3日後に復活するという教義があります。
『ドラゴンズドグマ』の主人公が復活するのは、キリストの復活に準えてる訳です。

覚者とは、アダムとイブの時代より神から切り離された人類が、
"聖霊"の仲立ちをもって、再び神と交わりを持つ為に悟りを開いた人の事です。
蒙(くら)きを啓(ひら)く者として、啓蒙者(enlightened person)と英訳されます。
「en-」は"~を与える"、「light」は"光"を指します。すなわち「光を与える者」。
バカでクズでお先真っ暗な私達を、明るく照らし導いてくれる人という意味です。

このゲームではより短い単語を使用し、覚(さと)った者、覚者(arisen)と呼んでます。
「arisen」は「arise」の過去分詞で、"目覚め"という意味です。


では、主人公が背負った原罪とは何か?

『ドラゴンズドグマ』の世界では、ドラゴンは神そのものです。
ドラゴンによる破壊活動を信仰する「救済」という宗教団体も出てきます。
その神に行いに対し、人々は畏れ、逃げ惑わなくてはなりません。

しかし、カサディスの村が襲われるオープニングにて、
たった1人だけ、神の行いに抗った人が居ましたよね?
それが主人公です。

この方あろう事か、慄いた領都兵の落とした剣を手に取り、
それを神の右手に突き立てるという、超絶暴挙を冒してしまいます。
アダムとイブが神の言い付けを守らず知恵の実を食べてしまったのと同じくらい、
100回死んでも贖いきれないほどの大変に罪深い行為です。

ですが神は寛大でした。罪を憎んで人を憎まず。
主人公から心臓だけを抜き出し、神に抗う事について考える猶予を下さいました。


ところで、このゲームでは「竜の心臓」というアイテムが登場します。
死んだ人を生き返らせる効果のある、重要なアイテムです。

それだけでなく、神であるドラゴンには心臓という弱点が用意されてます。
神話では、心臓には特別な力が宿っているというのは黄金パターンとして存在し、
ドラゴンの血は不老不死の力が備わっていると言われています。
つまり、特別な上に特別な力のあるドラゴンの血を帯びた心臓を使えば、
死んだ人が生き返る事くらい容易であるという事です。
逆に、生命力の根源である心臓を砕かれれば、いかにドラゴンでも死んでしまう。
こういう解釈だと、説得力があるのではないでしょうか。

で、肝心の主人公ですが、生命を司る心臓を抜き取られても、なぜか生きてます。
それは、心臓がドラゴンにぱっくんちょされて身体に取り込まれた後も、
不老不死の効果のあるドラゴンの血によって体内で動いているからでしょう。
主人公はドラゴンによって生かされている事になります。

主人公は辛苦の果てにこのドラゴンを遂に討ち果たし、心臓を取り戻します。
そして再び自分の胸に収まった心臓は、ドラゴンの血を帯びています。
この時、主人公はドラゴンと同じ、不老不死の心臓を手に入れた事になり、
神であるドラゴンと同格の存在になったと言えます。

復活して悟りを開いたキリストが神であり人であるのと同様に、
主人公もまた、神であり人である存在になりました。
神の言葉に近づけなかった他の覚者とは異なり、真の覚者となったのです。


―――


キリスト教にはもう1つ、神と同格の存在があります。それが
聖霊(holy spirit)です。
神の言葉に近づく為には、まず御心を神に近づけなければならないとされています。
そうでないと言葉の意味が理解出来ないからです。

『ドラゴンズドグマ』には、かつて覚者だったっぽい人達が3人登場します。

1人目は領王・エドマン。
かつてドラゴンの侵攻からグランシス半島を救ったという英雄です。

2人目は竜識者。
愚者とともにヒルフィギュアの丘で引きこもっているプロニートです。


この2人は、神の言葉に近づけず、真の覚者になれなかった人達でした。

エドマンは先后の命を生贄にして王座を得る事をドラゴンに申し出ますが、
亡き先后の面影を引く3番目の王后・エレノアが主人公に惹かれていくのに心を乱し、
しかもこの間男がドラゴンと同格になった事に発狂して、部下に討てと命じます。

エドマンはおそらく、ドラゴンから心臓を奪い返してはいるのでしょうが、
神と同格の力を得ていないので、ドラゴンが死んだ事で
永遠のはずだったその生命力が弱まったものと思われます。
あんなに雄々しく若々しかった、威厳に溢れた姿も、
玉手箱を開いてしまったかのように、老いて見る影も無くなってしまいました。


竜識者ははっきりとした事は分かりませんが、ドラゴンが死んだ時に
その身が一緒に朽ち滅びている事から、ドラゴンに心臓を奪われたまま、
取り返す事が出来なかった人であると考えられます。
人として生きる事も死ぬ事も出来ず、ドラゴンにただ生かされ、
暗い祠の中で永遠の時を刻んでいるだけの隠匿者になるしかなかったのでしょう。

ちなみに「愚者(fool)」というのは、キリスト教では「信者」の対義語となります。
神の教義に従わない”不虔の者”という意味です。
つまり、竜識者と一緒に神であるドラゴンに抗った事があるのは違いないと思います。


そして3人目はセレナのおばあちゃんである、森の魔術師・ソフィア。

このソフィアおばあちゃん、サブクエスト『ポーンの夢』の中で、
覚者の想いがポーンの中に蓄積されていき、やがてポーンは覚者と同じになる
という、このゲームのエンディングに秘められた謎を解く為の
重大な手がかりを、主人公とプレイヤーに託します。

ソフィアという主を失った、ソフィアのメインポーンであるセレナは、
このクエストの後に、カサディス村で人間として暮らしていく事になります。


ポーンと言えば、カサディス村がドラゴンに襲われ、
主人公が覚者として復活した後、どこからともなくふらりと現れ、
主人公をポーンとの契約に導いた最初のサポートポーン・ルークが居ましたね。
ルークは主人公をドラゴン討伐の領都徴募隊が駐屯する宿営地に連れて行きます。
そこで主人公は異界との繋ぎ口であるリムが発する声に従い、
ポーンの民との契約を結んで、メインポーンとなる従者を呼び出します。

この時、ストーリーを読み解くヒントとなるのが、最初の頃は主人公を含め、
神であるドラゴンが話す言葉=竜語が誰にも理解出来ていない点です。
字幕も付いていないので、プレイヤーにも何と言っているのか分かりません。
ですが、主人公が覚者となって以降は、竜語に字幕が入ります。
そこからリムが発する声も聞こえるようになったのです。

普通に暮らす人々は、ポーンの民を"異界渡り"と呼び、
感情を持たない人ならざる人として近寄らず気味悪がってますが、
それもやはり、ドラゴンの言葉が理解出来ないのと同様に、
霊的な存在を信じる事の出来ない、不信不徳の心から出るものだと考えられます。
「霊的」というのは"お化け"とかそういう意味でなく、"聖霊の御心"を指します。
キリスト教では、自分の魂を正しく取り扱う事の出来る人だけが
それを自覚し、神の言葉に近づけるとされています。
主人公はポーンに導かれて御心を理解し、ドラゴンの言葉に近づくのです。

神・キリスト・聖霊。これらが一つになる事が、真の覚者としての目覚めです。
これを、キリスト教義では「三位一体」と呼びます。
「父(神)と子(キリスト)と聖霊の御名において」という祈りの言葉の通り、
三者は共に等しく、同じものとして信じられています。


―――


さぁ、ソフィアおばあちゃんの言葉を思い出して下さい。

ソフィアの影響を受けたセレナは、ソフィアと同じになりました。
そして主人公が契約したメインポーンも、最後には主人公と同じになります。
ドラゴンと同格の存在となった主人公に、そのメインポーンが近づくというのは、
ドラゴン=覚者=ポーンの図式が成立し、三位一体となったという事です。
その証拠に、ポーンの民の右手には、主人公がドラゴンに抗った時に付けた
右手の傷と同じ場所に、光る傷を持っています。


三位一体説はキリスト教義において最も重要な定義の1つです。
この定義をストーリーの中に深く組み込んでいる以上、ゲームタイトルは
『Dragon's Doctrine』ではなく、『Dragon's Dogma』でなければならないのです。

あぁやっと頭に結びついた。

『ドラゴンズドグマ』を最後までやった人、ドラゴンを倒した後の
矢継ぎ早に展開するストーリーの意味が分からなくなかったですか?

それは、海外の人がこのゲームのタイトルに違和感を感じるのと同様に、
なぜ主人公がドラゴンに代わる神として新たな世界を作る事となったのかが、
宗教観に疎い日本人に説明の無いまま進んでいくからだと思います。
海外の人は、神と覚者とポーンが同じである事を教義(dogma)から理解できるので、
そこらへんの説明の一切が不要なんです。


しかし、キリスト教の定義とは全く異なるオリジナル解釈も見受けられます。
例えば「生贄」や「替え玉」の存在がそれに当たります。

『ドラゴンズドグマ』では自分の最も愛する伴侶がドラゴンへの生贄として選ばれ、
ドラゴンを倒した後は、一緒に生活する事になります。
宿屋の主人に悪夢を見たって人は多いのではないでしょうか。

キリスト教義での生贄とは、キリスト自身の事です。
人類全体が背負ってしまった神への背信行為に伴う原罪を、
何の罪もなく生まれてきたキリスト1人が犠牲になる事で、
全てをチャラにするのがキリスト教の聖書のお話。

このゲームは、主人公1人がドラゴンに抗う原罪を背負っているので、
その罪を赦す為には、やはり何の罪も持たない人が必要な訳です。


そして替え玉について。ドラゴンに代わる神として生きる事となった主人公は、
最期にはドラゴンの血を帯び不老不死の生命力を得た自分の心臓を、
北欧神話でドラゴンの心臓を抜き出す時に使用されたと伝わる
伝説の武器・リディルで取り出し、永遠の命を絶ちます。

この時、主人公の代わりに生き永らえるのが、主人公のメインポーンです。
メインポーンはすでに主人公と同じ存在となっているので、
主人公の後任を引き継ぐ事が可能でした。

キリストの場合、替え玉として別の人が磔にされたという俗説があります。
それは、キリストの弟子の筆頭に当たる人であったとも、
キリスト処刑の恩赦として釈放され、布教に尽力した囚人であったともされています。
どちらにしろ、キリストに近しいと言える人である事には違いありませんが、
この俗説をそのまま採択すると、死ぬのはメインポーンの方になります。


―――


とまぁこんな感じなんですが、以下、これまでのまとめです。


・ ドラゴン = 神
・ 覚者   = キリスト
・ ポーン  = 聖霊

・ 主人公の復活はキリストの復活に準えている。
・ 主人公は神であるドラゴンに抗った原罪を背負ってしまった。
・ ドラゴンの心臓は不老不死の象徴。と同時に心臓を失うと死んでしまう。
・ 主人公の旅は神の言葉に近づき御心を理解する為の旅。
・ ドラゴンから心臓を取り戻した主人公は、ドラゴンと同一の存在。
・ ポーンもまた主人公の影響を受け、覚者と同格になる。
・ その証拠がポーンの右手にある光る傷。
・ ドラゴン、覚者、ポーンは三位一体の関係。


ちなみに、ドラゴンズドグマのネタ日記の方で、主人公の名前を
アドナイ(Adonai)としたのは、ユダヤの言葉で"神"の隠語である事と、
"主人"という意味の「Adon」に、"私"という意味の「i」を加えて、
"私のご主人様"という、メインポーンから見たストーリーに
ぴったりの名前だった事から、その名前を付けました。


カプコン渾身の一作『ドラゴンズドグマ』は、海外の大ヒット作と比較すると、
全ての家屋に入る事が出来なかったり、眼前の山が越えられなかったり、
せっかくの掴みアクションが崖移動に使われなかったりと、
オープンワールドとしての余地が残されたまま発売を迎えました。

しかし、勢いを失った『ロックマン』や『ストファイ』を外注に出し、
開発資金を一本化してまで、自社制作の品質維持にこだわり抜き、
ここまで意欲的な作品を作り上げた事には、ファンとして本当に頭が下がります。

私も時間の許す限り、徹底的に遊び倒したいと思います。


―――


最後にウチのメインポーンをご紹介。

ドラゴンズドグマ日記~覚者の剣・主人公のリンです。
http://game.capcom.co.jp/DD/ja/pawn_detail/?pf=PS3&gid=Honey_Sweets


リン(♀) ストライダー

現在のレベル:
 89だったかな?

アビリティ:
 奮迅、猛攻、腕力、達人、制動、狙撃

メイン攻撃力1200、サブ攻撃力1100、防御力600越えです。
状態異常はダウン耐性以外は全て98%以上あります。


PSN ID: Honey_Sweets
ポーンを探す → Online IDから探す → 「 Honey_Sweets 」 


はいはい、スイーツスイーツww


見つけたら可愛がってやって下さい ヨロ(`・ω・´)スク!
時々、飼い主に噛み付きます。



それでは、引き続きネタ日記の方もお楽しみ下さい↓

覚者の剣(1)
http://mangadojyo.doorblog.jp/archives/7342432.html

覚者の剣(2)
http://mangadojyo.doorblog.jp/archives/7633887.html

覚者の剣(3)
http://mangadojyo.doorblog.jp/archives/8313497.html

覚者の剣(4)
http://mangadojyo.doorblog.jp/archives/9185012.html

 


ご清覧ありがとうございました。