クールジャパン


↑ですよねー。


経済産業省がクールジャパン室を設置してから、6月18日で2年が経つ。

クールジャパンは、主に知的財産を基盤とした産業の輸出拡大を目的とし、
特に国内では自動車産業に比肩するほどの市場規模に成長した、
映画やドラマ、漫画やアニメ、音楽、ゲームなどのコンテンツ産業において、
国際競争力の強化への指針として具体的な数値目標を掲げ、
2020年には、デジタル・ネットコンテンツビジネスを1.5兆→7兆円、
クールジャパン関連産業の4.5兆→17兆円の市場を獲得するとしている。

今年5月29日には総理官邸にて知的財産戦略本部が開催され、
「知的財産推進計画2012」なるものも発表された。


しかし、その海外では日本のコンテンツ産業はとっくにピークを過ぎており、
映画やドラマは韓流に押され、音楽だけが頼みの綱となっている。
アニメは06年、漫画は07年、ゲームは08年以降に国内でも市場規模が減少し、
状況としては輸出拡大どころか、総じて縮小傾向なのである。

かつてジャポニズムはゴッホなどに影響を与え、海外の価値観をひっくり返した。
果たしてクールジャパンはジャポニズムの再来となるのか、
筆者の思う所を、過去に書いてきた記事の総論として纏めてみたいと思う。

なぜ海外に受け入れられないのか?今回のポイントは3つ。

(1) 造形の違い
(2) コンテクストの違い
(3) 文化の違い

これらを明らかにする事である。


―――


(1) 造形の違い

海外のアニメやゲームに登場する造形の濃いキャラクターを見て、
「バタ臭い」と思った事はないだろうか。

これは感覚的に感じているものではなく、きちんとした客観的基準がある。
それが「黄金比(1.618:1)」と「白銀比(1.414:1)」である。
数学者である中村滋の著書「フィボナッチ数の小宇宙」では、
外国人が黄金比を好むのに対し、日本人は白銀比を好む事が示されている。

西洋での美の基準となるのは、やはり黄金比だ。
海外に行けば日本人は童顔に見られる事が多いのだが、
これは外国人の顔の方が日本人より平均的に面長で、
目鼻立ちもより大人っぽく見える為である。
モナリザの顔の縦横比が1.618:1で描かれているのに対し、
日本人が美人とする顔立ちは、縦の長さが僅かに短い。
その為、日本生まれのキャラクターも縦長の顔の持ち主は少なく、
海外では「醤油臭い」と思われる理由になっているのかも知れない。


参照:日本人は黄金比よりも白銀比や正方形が好き?
http://amuta.jp/asarticles/silver.html


日本でも受け入れられている例外と言えば、ミッキーマウスくらいだろうが、
それもそのはず、ミッキーは手塚イズムを受け継いでいるからである。



(2) コンテクストの違い

日本のコンテンツ産業の最大の強みは、キャラクターを中心とした
コンテクストマーケティングの確立と展開の速さにある。
「コンテクスト」は"文脈"と訳される事が普通だが、この場合は"顧客背景"を指し、
顧客のニーズに合わせて記号化・象徴化された個性やテーマを、
理解度の高い顧客が「察する」事で成立するマーケティング方法の事だ。
日本ではこれが当然のように行われており、ハイコンテクスト文化とも呼ばれている。

これはAKB48とK-POP、両者のマーケティングを比較すれば瞭然で、
K-POPが"グループ"を売り込むのに対し、AKBは"個"を売り込んでいる。


海外ではこういったコンテクストが共有されていない為、
デフォルメされたキャラクターからは、全体を「察する」事が出来ない。
キャラクターだけでなく、日本は今やゲームや家電製品に至るまで
あらゆるものが"文脈病"に陥っており、ガラパゴス化していると言われている。
同じ日本人でも理解出来ない人が居るようなコンテクストなら、
外国人がより難解に感じるのは、想像に難くない。

しかも、現在のコンテンツ産業はますますコンテクストに依存している。
悪い事にはそれが先鋭化してデフォルメされた型だけが共有され、
特定のターゲット以外には全くウケなくなる傾向になってしまった。
『にこにこぷん』が『ぐ~チョコランタン』になっても
基盤となるコンテクストが変わらないのと同様で、
産業構造としてはNHK教育の子供番組と大差が無いほどの偏り方である。



(3) 文化の違い

海外では圧倒的に大人の文化が支持されている。
子供は未完成として扱われる為、子供を感じる要素は徹底して排除される。
ところが日本のキャラクターは、造形にしろコンテクストにしろ、
海外から見たら「子供っぽい」と思われるもので出来ている。

日本では「内心の自由」が憲法によって明文として認められており、
子供と大人の文化が混ざっているコンテンツも、中身が伴えば大人として扱われるが、
海外では、大人と子供は宗教観によって完全に隔てられていて、
子供に通じる行動だけでなく、思想ですら道義に反する行為である。

もちろん知的財産についても同様で、子供を感じさせる文化は、
日本では受け入れられても、海外では受け入れられない可能性が高い。
輸出面で未だ2%ほどのシェアしか獲得出来ないでいるのは、
こうした如何ともしがたい理由を抱えているからだろう。


―――


日本のコンテンツ産業は、こういったものに頼らざるを得ないほど、
何年も前から頭打ちの、厳しい状況に追い込まれている。
だが元々は白銀比の芸術も、キャラクターコンテクストも、
日本のお家芸=ストロングポイントだったはず。

問題は、自国の文化を売り込むにあたり、方向性が定まっていない事である。
片方では数値目標を掲げて推進しているように見せかけても、
もう片方ではそのストロングポイントを規制する動きがあるのだ。

次回は、コンテンツ産業への規制と市場縮小の関係性について、
具体的なデータを用いて解説していこう。
 



ご清覧ありがとうございました。