参議院選挙

第23回・衆議院議員総選挙の投票日が、1週間後に迫ってきました。
どの政党に投票するか、もうお決めになりましたか?

さて今回の記事は、まだ決めてない!とお悩みの漫画・アニメファンの方に向けた、
各主要政党の支持組織について纏めたものです。
これを読んでから投票先を決めても、遅くはないですよ。

なお、以下の解説はあくまで一般的な定義として挙げるもので、
同じ党内でもそれに当てはまらなかったりする事はもちろんあります。
それぞれの議員さんがどんな考えをお持ちなのかは、
個別の選挙用資料やオフィシャルサイトでご確認下さい。


では、どうぞ。


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なぜ漫画やアニメは、表現規制の槍玉に挙げられ、
理解に苦しむような根拠をもとに法制化が進んでいるのでしょうか。
実はこれ、漫画やアニメが決して害悪だからではありません。
これを念頭に置いておく事が必要です。

規制賛成の政党に共通項として挙げられるのが、
排他的な思想を持った組織に支持されている事です。
彼らから組織票を集め、強固に支援をされてきたからこそ、
反対を唱える各業界からのより多数の意見が圧殺されているのです。
民主主義もへったくれもあったもんじゃありません。



神道政治連盟(神政連) ~ 自由民主党

日章旗


 自民党の基盤となっているのは、日本の伝統文化の復権を謳う神政連です。
 宗教法人・神社本庁を母体としています。要するに神社です。
 「美しい国」「日本を取り戻す」為に、戦後教育のあり方を見直し、
 古きよき道義に基づいた国づくりを目指しています。

 とても素晴らしい価値観のように思えますが、実情は排他的で、
 アメリカから輸入された個人主義に基づく新しい価値観を決して認めず、
 かの国から貰った「憲法9条」を恥ずかしい憲法だと言い切り、
 フリーセックスの問題にも強く反対しています。
 異なる価値観の排除というのは、同じ神社同士の喧嘩にもあらわれていて、
 神社本庁の95%は伊勢神宮派(伊勢派)と呼ばれる人達ですが、
 ここは出雲大社派と対立し、放逐した歴史を持ってます。


 こんな排他的な人達に目を付けられたのが、漫画やアニメの性描写です。
 日本人は慎ましやかに生きなければならないので、
 男性はエロ本なんて見ずに国家と社会への奉仕に汗を流し、
 女性は三従の教えを守って、家の奥に閉じこもらなければなりません。
 彼らが本当に規制をしたいのは、表現の自由ではなくセックスの自由です。
 結婚するまで清い関係を保ち、婚前行為に及ぶのは、
 伝統文化という美的基準から見て、けしからんという訳です。

 個人主義を植え付けられた現世代はもう言う事を聞かないから、
 次の世代の子供達には、教育の段階でこれを教えていこうというのが、
 神政連および、支持を受ける自民党議員の狙いです。


 そもそも信教の自由は、その恥ずかしい憲法によって保障されているものです。
 外国の異なる価値観が本当に全て誤りだとするなら、
 戦後に発達した民主主義までも否定しなければなりませんし、
 お互いの価値観を認め合うのは、人種や国籍を越えて世界の常識です。

 日本の誇る伝統文化は確かに素晴らしいものですが、
 フランス人権宣言に端を発する個人主義思想を排除したり、
 サブカルチャーなど他の文化を全否定するほど素晴らしいかと言えば、
 そんな事は無い、どちらも素晴らしいと言うしかないと思います。



● 創価学会 ~ 公明党

創価学会


 公明党の支持母体は、言わずと知れた創価学会です。
 元は法華宗(日蓮宗)の宗派のひとつでしたが、こちらは神社本庁とは違って、
 本家本元の日蓮正宗から破門された方になります。

 学会の行いはあまりに有名なので今さら説明の必要は無いでしょうが、
 他の宗教諸派と比較しても極めて排他的で、入信の際には
 自分の家に先祖代々からある仏壇・仏具を燃やしてしまえと命じるほどです。
 学会こそが聖教で、その他は邪教と説く凄まじい教えは、
 実動部隊である婦人部にもしっかり根付いており、ここがノーと言えば、全てダメ。
 もちろんその矛先は、漫画やアニメの性描写にも向けられています。


 学会員のご婦人方は、94年のアメリカワールドカップ決勝の舞台に立った
 ロベルト・バッジョが偉大な選手であると知っていても、対戦相手のロマーリオが
 大会5ゴールでMVPを獲得した同じくらい偉大な選手だとは知りません。
 理由は、バッジョが学会員で、ロマーリオはそうではないから。

 サッカー以外でもそうです。エロ漫画を描くのがプロになる近道である事も、
 またそうして才能を認められプロになった人の中から、
 文化庁がメディア芸術祭で推薦した作家が生まれている事も知らない。
 入信者の個別の都合を一切聞かないのと同じで、
 背景には一切に目を向けようとせず、存在の否定だけを行うのです。
 だからこそ批判が多いですし、むしろされて当たり前です。


 表現規制の法制化を最も強く推進しているのが公明党ですが、
 その裏では、創価学会の苛烈な排他思想が働いています。
 念のため言っておくと、公明党の政治理念は衆院選の時に触れたように、
 経済と雇用の両輪が揃っていて、かつ実行性の高いものです。
 理想ばかりを語って1つも実現できない労働系の野党とは違うと言えます。

 だからと言って、公明党の理念だけが素晴らしい訳じゃありません。
 創価学会の教えは決して誤りではないからこそ支持が厚いのでしょうし、
 また実際、会員の方々には偉大な人物が多いのも事実ですが、
 少なくとも他者を否定する行いを賞賛する事は出来ません。



● 霊友会 ~ 日本維新の会(石原慎太郎サイド)

霊友会


 日本維新の会の共同代表である石原慎太郎氏に纏わるのが霊友会です。
 霊友会もやはり法華宗(日蓮宗)系の宗教法人で、
 石原氏は弥勒山の顔役であり、自らも入信されています。

 石原氏の個人的な思想について述べる時は、
 必ず、ある作家の名前を並列に述べなければなりません。
 その名は三島由紀夫。この人物も日蓮宗と深い関わりがあります。
 石原氏は三島と長い親交があり、お互いを認め合う仲でした。
 しかしご存知のように、三島は自衛隊市ヶ谷駐屯地で割腹自殺します。
 この時、三島が訴えていたのは憲法改正です。

 石原氏は、三島の思想を色濃く受け継いでいます。
 霊友会は先祖供養による菩薩行の実践を教えとしており、
 自分の考え方を一徹するという教義もあります。
 石原氏はこの教えをずっと、ずーっと体現してきた信念の人です。
 三島の美学を、死を恐れ理解を恐れる文学青年の虚勢であると看破しながらも、
 今度は自らが暴走老人として虚勢を作り出し美学としていく事で、
 先祖の果たせなかった憲法改正の願いに報いているように思えます。
 今や三島の魂が乗り移った日蓮の権化です。
 敵意剥き出しの対米・対中姿勢を取るのも、党の方針と言うより、
 石原氏個人の排他思想によるものが大きいのです。


 ただ、三島由紀夫との違いは1つだけあります。
 漫画・アニメなどの、サブカルチャーへの理解がまるで無い所です。
 三島は林房雄氏との対談の中で、日本文化についてこう語っています。

  歌舞伎、文楽なら守ってもいいが、
  サイケデリックや“おらは死んじまっただ”などという
  頽廃的な文化は弾圧しなければならない―
  というのは政治家の考えることだ。私はそうは考えない。
  古いもの必ずしも良いものではなく、
  新しいもの必ずしも悪いものではない。


 三島の『文化防衛論』は、憲法第1条に掲げられた天皇の条文を重視し、
 日本文化を遡れば必ず天皇と神道に行き着くとしています。
 しかしそれは、新しい文化を頑なに否定し、
 伝統文化のみを崇拝する事ではないともしています。
 現に三島は数々の漫画作品に評を残すほど、相当な漫画通でした。
 その漫画を規制しようとする現在の石原氏を見たなら、
 暴走を止める為に、チクリと釘を刺す事でしょう。



● 世界基督教統一神霊協会(統一教会) ~ みんなの党、日本維新の会、他

純潔運動


 ここももはや説明不要でしょう。数々の反社会的活動で
 100件を越える訴訟事件と4300人の被害者の生んだ、悪名高い統一教会です。
 会費が1ヶ月500円の霊友会が優しく見えるほどです。
 創価学会と同様に日蓮正宗から破門されてます。当たり前です。
 もっとも彼らにとっては学会や正宗の方が邪教なのでしょうが、
 一般的に見れば、似た者同士と言った所でしょう。

 統一教会は、キリスト系の純潔教育を教えとしています。
 この純潔運動によって、漫画やアニメの性描写は否定されています。
 しかもこれを条文化し、神政連のように明確に敵視してるのがポイントです。


 みんなの党と日本維新の会の関係を見る時は、
 統一教会の立場から紐解くのが、とても分かりやすいです。
 みんなの党の代表・渡辺喜美氏は、先代から統一教会と繋がりがあり、
 また、維新の会の共同代表・橋下徹氏は、
 自身のブレーンに統一教会派の人物を起用しています。
 みんなの党が維新の会に選挙協力を持ちかけたのは、
 どちらも統一教会の組織票によって支えられているからです。

 渡辺氏と橋下氏の共通点は、本心では教会の教えに忠実でない事です。
 ここが石原氏と異なる所で、良い意味では融通が利き、悪い意味では蝙蝠です。
 バランスって取れないもんなんでしょうかね。

 ところが、橋下氏は例の慰安婦発言で急速に支持を落としました。
 過去にコスプレ不倫が報じられた経緯を持つ人物でもあります。
 純潔教育を謳う統一教会の組織票が欲しい渡辺氏は、
 自分まで教会の支持を失う訳にはいきません。
 だからこそ、みんなの党側から選挙協力の盟約を解消したのです。


 両者が同じ穴の狢である事は、一般の有権者にとっくに知られています。
 それでも渡辺氏が意地を通したのは、それはつまり、
 渡辺氏が有権者ではなく、統一教会の票しか当てにしていないという事です。
 教会の排他的思想から距離を置いているにせよ、
 こういった人物が信頼に足りるとは、私は思いません。


―――


ここまでお読み頂いたら分かると思いますが、
日本の国会で行われている政党政治というのは、国民の意思よりも、
特定の団体の意思が反映されやすい傾向にあります。
これで何が民主主義と言えるのか分かりません。

漫画やアニメの表現規制は、この傾向が顕著にあらわれています。
それを選挙に行かない若者のせいにして、論理をすり替えているに過ぎません。
反対意見を表明している出版会社やアニメ制作会社に、
若い世代しか居ない訳ではありませんので。
ただ投票している人達の多くは、その魂胆を知らずに投票しているか、
もしくは知ってても妥協せざるを得ないというだけです。


ネット上での選挙活動が解禁された今、ネットに通じる私達が出来るのは、
今さらのように擦り寄ってくる候補者の魂胆を見破り、
その背景となる思想をネットを使って共有していく事です。

漫画・アニメファンの方には、表現規制を叫ぶ政党の裏側に、
こんな排他思想の組織票が働いているのを、ぜひ知っていて欲しいと思います。
 


ご清覧ありがとうございました。