↑ソーシャルゲームの未来予想。
引用: 世界で勝てない日本のゲーム業界」
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/1462
現在のコンテンツ産業は、最初に述べたように、
総じて縮小傾向にあり、有効な打開策を未だ見出せていない。
衰退の原因はいったいどこにあるのか。
これはコンテンツを供給する企業が、ソフト開発のノウハウを、
つまりフォーマットを築けなかった事にある。
アニメやゲームなどがそうだが、ソフト制作を下請けに丸投げしている為、
発注をかけた大元の会社に開発力が蓄積されないのだ。
現在において開発力を発揮している企業は、
フォーマット制作にも着手し、メインコンテンツの品質維持に努めてきた。
特徴的な例として、ゲーム業界を見てみよう。
『モンスターハンター』の大ヒットで知られるカプコンは、
『ドラゴンクエスト』など主力製品までをも下請けに出している
業界トップのスクウェアエニックスと一線を画した経営方法を取り、
勢いを失ったタイトルシリーズのみを下請けに出し、
資金のありったけを主力製品に注ぎ込んで、開発力を維持している。
カプコンは「MT Framework」というゲームエンジンを既に持ち、
『デビルメイクライ』、『戦国バサラ』、『バイオハザード』など、
様々なゲームに応用する事で、安定した品質を早く提供出来るようになった。
スクエニにも『FF13』に用いられた「Crystal Tools」というエンジンが存在するが、
例えばこれを『ドラクエ』や他タイトルに応用するなどは出来ず、
開発環境が分散している感は否めない。
日本のゲーム業界が、ここ5年間で海外に大きく水をあけられたのは、
こうした開発環境のノウハウが蓄積されてこなかった為だ。
RPGなどの売れるコンテクストを使い回して技術向上に目を向けなかった間に、
海外ではゲームエンジンをオープンプラット化して広く提供し、
ユーザーの手でプログラムをいじれるほどにまで進化している。
こうした世界と戦っていく為に、カプコンは日本製のフォーマットを作り、
ソフト開発を平滑に行う環境を整えたのだろう。
これは、海外進出における日本のビジネスモデルとして、
1つの指針となるのではないだろうか。
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プリキュアシリーズのエンディングでは、コナミが開発した
「トゥーンレンダリング」というフォーマットが伝統的に用いられている。
セルシェーディング技術の分野ではディズニーが先鞭をつけていたが、
フォーマットとしては根付かず、とっくに手を引いている。
ピクサーの監督が2009年に発表した作品も、2Dアニメだった。
海外ではアニメは「子供が見るもの」と認識されている為、
映画では3Dを本物に見せるもの凄い技術が使用されているものの、
3Dを2Dのように見せる技術的な下地は育たなかったのである。
初音ミクの海外進出の例を見ても、ヤマハの「VOCALOID」という
技術的背景があったからこそ、世界に冠たる日本製コンテンツとなり得た。
英語圏では、機械の耳で of と ob などの区別が付けられない。
ゆえに音声認識技術が定着せず、その間隙を初音ミクは突いたのだ。
日本のアニメ制作会社がトゥーン技術を武器に現地法人を立ち上げれば、
海外の3Dアニメの市場を独占できる可能性があるし、
それほど高い随一の技術を日本は有している。
海外進出のリスクは、それこそ政府がサポートすれば良い。
問題は、政府がここまでの背景を認識していない事だ。
ノウハウ蓄積の為には、まず雇用の流動化を防がなければならない。
アニメ制作会社のスタッフはフリー契約を強いられており、
年収100万円台というのもザラで、3年以内の離職率が9割にのぼる。
このような環境下では、技術的なフォーマットの開発など不可能だろう。
こうした苦境にある人達をNPO法人がサポートしているものの、
本当にサポートすべき立場にあるのは、クールジャパンを掲げる政府である。
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そんな中でも、デジタルコンテンツ産業においては、
唯一と言っていいほど、右肩上がりの成長を続けてきた。
引用:INTERNET Watch様「日本のコンテンツ産業の黄昏」
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/yoake/20100928_396436.html
特に、近年で著しい成長を遂げたのがソーシャルゲームであり、
DeNAから業界トップの座を奪い取ったGREEは、
世界進出に焦点を合わせて、着々と歩みを進めている。
なぜここまでの成功を収める事が出来たのか?
それは引用元にある通り、携帯電話というフォーマットの普及にある。
海外でソーシャルゲームと言えば、PC市場がメインで、
米国のジンガや英国のプレイフィッシュが確固としたシェアを築いているが、
スマホ市場の方ではリーディング企業がまだ存在していない。
後発の日本もまだ割って入れると見る事が出来るだろう。
が、問題な点が2つある。
課金者が圧倒的少数なのと、パケット定額制廃止の流れである。
前述のジンガは2億3000万人の世界一のユーザー数を抱えながら、
課金者は770万人しかなく、全体の3%に満たない。
1人当たりの売上高はわずか3.5$、日本円換算で283円で、
DeNAの4100円と比較すると、利益誘導率が低い事が分かる。
これはジンガの経営手法のせいではなく、 海外の特色なのである。
DeNAはかつてfacebookと組んで同様の問題にぶつかり、
海外PCソーシャルゲーム市場への進出を断念している。
その上、海外ではモバイル環境に対するキャリアサービスが遅れている。
接続料金がべらぼうに高く、モバイル決済化も進んでいない。
ネットにつなぐ時は、自分でPOPやSMTPまで設定しなくてはならない。
さらに世界最大手のベライゾンと、iPhoneのキャリアであるAT&T、
世界のツートップがパケット定額制から従量課金制へと移行しており、
インフラ環境になるべくお金をかけない姿勢を鮮明にしている。
スマホが世界中でこれだけ普及し、ソーシャル化も進んでいるのに、
スマホ市場に広がりが見られないのには、それなりの理由があるのだ。
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ご存知のように、日本は各キャリア会社がパケット定額制を敷く事で、
デジタルコンテンツ産業の成長を後押ししてきた。
海外のように早いうちから従量課金制にシフトしていたら、
GREEもDeNAも、現在のビジネスモデルから手を引く他は無かっただろう。
日本のキャリア会社と1セットになって海外でもインフラ整備し、
それを政府が支援をしていくというなら別だが、いくら何でも話が大きすぎる。
しかし、顧客を囲い込むビジネスモデルは海外に持ち込める可能性がある。
DeNAや海外企業は会員数を伸ばす事で収益を上げるモデルを採用しているが、
GREEは顧客1人当たりの単価を伸ばすモデルを採用し、成功している。
方向性としては決して間違ってはいないのだ。
デジタル分野においては、コンピュータの歴史を開拓してきた海外に、
日本独自のアイディアをフォーマット化してきたように、
日本のデジタルコンテンツ産業が右肩上がりで成長してきたのは、
ダウンロードコンテンツの内容と販売網が優れていたからだ。
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ご清覧ありがとうございました。