漫画道場

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引っ越しました。
新ブログ「記号論研究所」を宜しくお願い致します。
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2012年05月

【ゲーム】ドラゴンズドグマ日記~覚者の剣(2)


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前回:覚者の剣(1)

就職氷河期のど真ん中で孤独に喘いでいたリン。
株式会社ポーンシステムに就職し、これで生活が安定したかと思いきや、
派遣社員として送られた先は、見知らぬ異世界だった…。


 中 世 紀 救 世 主 伝 説

 覚者の剣 第2話「覚者あらわる所、乱あり」



―――


…どこだここ。


> ルーク
 覚者様、こちらが従者となりますポーンにございます。

> アドナイ
 ぬうぅ…。

 も…萌えぇぇぇ。


そして誰この人たち?
なにやら英語で会話してるみたいだけど。


(´・д・)ハッ!

やだ…ワイルドなイケメン!


ケンシロウ

> アドナイ
 …。

 そこの少女、名は何と言う?


キャッ、低くて素敵なお声♪
わたしぃ、リンって言いますぅ~。


> アドナイ
 リンたん…。

 春の野風のごとき萌えっぷりだ(*´Д`)ハァハァ


…え?
…なにこのひと?


> ルーク
 ちょっと君、こっち来て…。


む、あっちのひげ面には興味無いんだが、まぁいっか。


> ルーク
 君、うちの会社の新人だよね?


あぁ、あなたが面接官の人が言ってた会社の先輩かぁ。
そうですそうです、今日からこちらでお世話になります。

で、あの変な目付きの人がクライアントさん?


> ルーク
 そう、あちらがクライアントのアドナイ様。
 そして君が居るこの場所はグランシス半島という所で、
 元の世界から見たら、いわゆる異世界に当たる。
 信じられないかもしれないが、君はここに派遣されてきたんだよ。


な、なんだってー!?


> ルーク
 この石碑こそ、我が社が開発した「Lease Introduce Module」、略して"リム"。
 石の力で派遣されてきた私達は、こちらでは"異界渡り(ポーン)"と呼ばれていて、
 ポーンはこの世界の救世主であられる"覚者"様に従う契約を結んでいる。


> アドナイ
 ゚+。(∩ω∩*)゚+。


…はぁ、そうっすか。

(なんとなくこの会社の事が分かってきたな。)


で、それはそうと、救世主ってどういう事ですか?


> ルーク
 …。

 私達は「ある目的」を果たす為に、遥か西へと旅している。


> アドナイ
 …そこからは俺から話そう。

> ルーク
 ハッ…、仰せのままに。


んん、何やら急に張り詰めた空気…。
どうやら訳アリみたいね。


> アドナイ
 あれは2日前、俺がカサディスの村でまだ漁師だった頃の話だ…。



―――



(平和だったカサディスの日常は、この日、終わりを迎えた。)


> ドラゴンだーーーーー!

 ドラゴンが来たぞーーーーー!!



なにっ!?


(突然あらわれた、あいつの手によって…!)


シン

> ドラゴン
 フフフ…。力こそが正義…いい時代になったものだ。
 強者は心置きなく好きな物を自分の物に出来る。


ば…ばかな…!
本物だ…。

なぜドラゴンがこの村に…!


> キナ
 キャァーーッ!


キナ!ここにいろ!
あいつは俺が食い止めてくる!


> ドラゴン
 フハハハ…くらえっ、竜者獄屠炎!


> うわあああぁぁぁぁぁーーー!


ぐっ…、コルテスがやられた…!
どこかに…武器は…?


…あった!


やめろ貴様、これ以上は好きにはさせん!


> ドラゴン
 ククク…死に急ぐか!
 お前など俺の敵ではないわ~~~!!

 死ねぇっ、竜者凄斬爪!


ぐぅはっ!


(強烈な一撃を受けて吹っ飛ばされた俺は、砂浜に背を埋める事しか出来なかった。)


…く…くそ…っ。

…うぐっ…。
…ダメだ…立てない。


> ドラゴン
 …。

 あれ…?
 やだ…この子あたいの超好み…!


 ちょっと起きて、あなたのお名前は?


り…竜語…?
う…ぐ…何を…言ってるんだ…?


> キナ
 アドナイーッ!起きてーーー!


> ドラゴン
 そう、あなたアドナイっていうのね。
 しゅてきなお名前ね。


に…逃げろ…キナーー!!


> ドラゴン
 う~んやだ惚れちゃう。
 ねぇ、試しにあたいを愛していると言ってみて?


…くっ…体が…動かな…い。


> ドラゴン
 あなたのたった一つの言葉でいいのよ。
 強制はしないわ、自分の意志で言うの。


あ…ぐ…ぁぅ…。


> ドラゴン
 なぁに~きこえんな~~!
 その程度であたいの心が動くと思っているのか~~!



(殺される…そう思ったが、あいつは俺に近づいてきた。)


> ドラゴン
 …まぁいいわ、見逃してあげる。

 その代わり、
あなたのハートを頂いていくわね。
 返して欲しかったら、必ずあたいにもう一度会いに来るのよ。

 いいわね、約束よ?


(そしてあいつの鋭い爪が、俺の胸に伸びてきた。)


> ドラゴン

 竜者虐指葬!


アッーーーーーーー!


―――


> アドナイ
 この時、俺の体にえもいわれぬ快感が走った…。


…は?


> アドナイ
 心臓を貫かれ、体中に電気が走ったような衝撃の後に、
 俺は知った…。

 これがオーガズムか!


…(∂△∂;)


> アドナイ
 再び目が覚めた時…。俺の胸には、大きな竜爪の傷痕と、
 あいつへの強烈な憧憬が宿っていた…。

> ルーク
 アドナイ様はこうして、穏やかな心を持ちながら
 激しい痛みによって絶頂に昇り詰められる事の出来るお方…、

 "覚者"として目覚められたのだ!



へ…、

変態


> アドナイ
 ちなみに、攻防どっちも行けます(キリッ


そういう目覚めかよ、聞いて損したわ!


> アドナイ
 という訳で俺達はドラゴンの居る遥か西に向かって旅をしているのだ。
 もう一度あの快感を教えてもらう為に…!


> ルーク
 私も初めての夜に教えてもらいました…。
 覚者様はまさに混沌とした世の救世主!
 ぜひともこれはドラゴンに会って、快楽の極意を学ばなければ!

 そこに逝けば~どんな夢も~ 叶うというよ~♪
  誰もがみな~イキたがるが~ 遥かな世界~♪


や…やばす。
こんな所と知ってたら絶対に応募しなかったのに…。


いーーーやーーーーー!!!



 第2話~完


―――


【次回予告】

 てーれってー(あの曲)

 ドラゴンに心臓を奪われ、覚者として目覚めたアドナイ。
 彼の向かう先には、幾度もの試練が待ち受けていた。
 激闘を重ね、成長を遂げるアドナイとリン。
 しかしそこには、悲しい結末が待っていた…!


 次回、覚者の剣
 第3話「お前の血は何色だ」


お前はもう…死んでいる!
 


ご清覧ありがとうございました。

【オタク論】(3) 自己自身である事


エヴァンゲリオン

↑シンジの心象風景。他人に引かれた"レールの上"を走る。


『エヴァ』はなぜヒットしたのか? 
これまでさんざん語られてきた事だ。 

ある大手新聞社は、オウム事件や阪神大震災によって 
人と人との繋がりを求める人が増えたからだと理由を後付けしたが、 
当然ながらそんな表面的な理由であるはずが無い。 

『エヴァ』は、監督・庵野秀明という人物そのままが表されていて、 
アニオタがそれを100%理解したというのが、ここで挙げる理由である。 


―――


3月のライオン』の回で説明したように、『エヴァ』はとても分かりにくい。 
解釈項の中に、心理学や実存哲学などの難解なステップが混じっていて、 
しかもそれが作品の中にきちんと落とし込まれずに、 
難解な状態のままテーマとして放り出されているからだ。 

この傾向が見られるようになったのが、予算の問題で 
スタッフが大幅に入れ替えられた第16話「死に至る病、そして」から。 
主人公の「碇シンジ」くんが使徒の虚数空間に取り込まれ、 
精神世界の中でもう1人の自分と自問自答する回である。 
これを境に、物語は心象的なものへと展開していく事となる。 

制作会社のガイナックスは、この頃はまだ小さな会社で、 
『ふしぎの海のナディア』の頃から予算に苦しめられていた。 
『ナディア』は湾岸戦争勃発で放送が中断、NHKから追加予算が出るなど、 
制作時間とお金に余裕が生まれた事で何とかクオリティを維持できたが、 
『エヴァ』の時にはそんな偶然は起きなかった。 
第16話以降、制作現場は破綻し、クオリティは著しく後退した。 
例の最終2話のプロットもこの時期に完成している。 

庵野監督は『エヴァ』を自分の心象風景を描いた作品であると述べ、 
宮崎駿の『紅の豚』を「パンツを脱いでいない」として批判しているが、 
庵野監督にとってのパンツを脱いだ状態=オナニー・ショウが、 
つまりは第16話以降の「シンジ」くんであると言えよう。 
予算が底を突いた事で表現方法が変化し、少ないセル枚数ながらも 
核心を避けて思わせぶりなキーワードを散りばめ、 
その他の説明を一切せずに視聴者の想像に委ねるようになった。 
これによって、深淵さが演出され、世界観が強調された。 

※ キャラクターデザインを担当した貞本義行の漫画版『エヴァ』では、 
  こうした表現は用いられず、第16話の部分もオールカットされている。 


『エヴァ』は理解の有意水準を越えた難解なものであったが、 
『宇宙戦艦ヤマト』から『機動戦士ガンダム』まで、 
ありとあらゆるアニメを享受してきたアニオタにとって、 
『エヴァ』を理解不能と結論付けるのは矜持に反するものだった。 
第6話までの高いクオリティと、時折はさまれるセクシャリズム、 
そして16話以降に演出された深遠な世界観は、 
彼らの心を掴んでおり、TVの前から離さなかったのである。 

その支持の大きさが、最終2話で決着する心象描写も好意的に捉えられ、 
難解なキーワードがアニオタのα係数を充分に刺激した事で、 
放送終了後に強い反響を呼び、関連商品がオリコンチャートを総なめした。 
商業的露出が増えたのがきっかけで、『エヴァ』の人気は 
アニオタの枠を飛び越え、一般層にまで波及していったのだが、 
この時、心理学や実存哲学の専門家ではないオタクの彼らが、 
専門家にも劣らない高い出力によって一般の人に面白さを伝えていった。 


『エヴァ』は、アニオタという存在が無かったら、 
庵野監督の自己満足で終わっていた作品であったに違いない。 
だが、庵野監督は伝えるべき事は伝え、最善の努力を尽くした。 
そうした努力を、有意水準の高いアニオタが100%拾い上げてくれた事で、 
『エヴァ』という難解な深層世界が補完されたのだった。 

また、スポンサーである角川書店がガイナックスに潤沢な予算を与え、 
分かりやすいロボットアニメとして作らせていたなら、 
庵野監督の色が薄まり、ここまでのヒットもしなかったはずだ。 
スポンサーの意向に邪魔されず、監督の意向が強く反映された事が、 
知的深度を深め、逆にアニメの潜在需要の高さを市場に示した。 
ちょうど同時期には『ガンダムW』が放送されているのだが、 
『W』の人気がガンオタどまりだったのは、登場人物の内面性が複雑でなく、 
注目を集めるほどの演出ではなかったからだと思われる。 


庵野監督が自分の心象風景を、難解な解釈項を用いて複雑にし、 
深淵に見せるように巧みな演出をして、確固たる世界観を形成した事。 
また、それをアニオタが好意的解釈とセールスでバックアップし、 
一般的に広く知られるほどに知名度を押し上げた事。 

この2点が、『エヴァ』が大ヒットした理由だろう。 
「碇シンジ」くんが自己肯定していくストーリーが評価されたのは、 
『エヴァ』がアニオタによって補完された後の話である。 
それまではおおよそ共感と呼べるほどの理解はされていなかった。 


この後、宮崎監督もパンツを脱いで『もののけ姫』を作り、 
アニメに限らず、特撮・漫画・ゲームなどその他の分野でも、 
難解なテーマを作中に落とし込んだ優れた作品がいくつも生まれ、 
サブカルチャー全体で知的深度が一気に増した。 
そしてこの時にもまた、様々な分野の「オタク」の人達が、 
一般の人への理解の橋渡し役となっている。 

「オタク」にとってやっている事は、『ヤマト』や『ガンダム』によって 
その存在を認知された20年前と何ら変わらないのだが、 
一般の人が『エヴァ』以降、オタク文化に積極的に興味を持ち、 
「オタク」に対する有意水準が引き上げられたのである。 
『エヴァ』は、社会現象を起こして市場を活性化しただけでなく、 
少数として区別されてきた「オタク」の地位を向上させた。 
『エヴァ』はオタクにとって、"希望"となったのだ。 


―――


シンジくんの葛藤は、性善説がより強く打ち出された 
劇場版第25話「Air」、26話「 まごころを、君に」で幕を閉じる。 

シンジくんは他者との交わりに"絶望"し、"ATフィールド"を張って 
リビドー(生)という名の自己自身を保持しようとする。 
"AT"とは、"Absolute Terror"の略で、絶対恐怖と訳される。 
他者と同化して自己自身を喪失する"絶望"=デストルドー(死)は、 
"アンチATフィールド"を展開して世界中の人を液体にしてしまう。 
他者との完全な同化こそが、人類補完計画の正体だった。 

しかし彼は、"絶望"して他の人と同じ液体になるよりも、 
他者と区別された自己自身である事を望み、元の居場所へと戻った。 
それは、光明思想家のジョセフ・マーフィーが示した"希望"に他ならない。 
キルケゴールが提唱した"絶望"は"死に至る病"であり、 
他者との交わりが自己自身を喪失させると説明したが、 
マーフィーは、"希望"はどんな重病でも治す特効薬であるとし、 
他者の中で自己自身を発揮する為の、"潜在意識の法則"を提唱した。 

シンジくんの選択は、「斑目」が「オタク」に見えない服を買いに行き、 
自己自身としての矜持を口にしたのと同様である。 
他者と同化する為にクソ高い服で身を包めば、トレードオフで 
エロゲーや同人誌を購入する資金を失い、自己自身である事が出来ない。 
「斑目」は結局、他者と同化する事を選択し、服を買う。 
「春日部さん」は、「いーじゃん似合ってんじゃない?」と言うものの、 
本当に必要なのは「高坂」のように自己自身である事だったはずだ。 


劇場版第26話の最後に描かれたのは、『変身』と同じ不条理である。 
元の居場所に戻ってきたシンジくんを待っていたのは、 
崩壊した世界と、恐怖の対象であるアスカだった。 
彼は再び他者との交わりを恐れてアスカの首を絞めるも、 
アスカはシンジの恐怖を理解し、頬をなでて受け入れた。 
彼女もまた、量産型エヴァに陵辱され、"絶望"を知ったからだ。 

シンジは他者との交わりに"希望"を見つけて、涙を流す。 
しかしアスカにとっては、シンジの恐怖は理解できても、 
シンジ自身は、まだ有意水準を越えた、理解しがたいものだった。 
自分の上で泣きじゃくる情けない男に向かって、 
「気持ち悪い」と一言つぶやき、そこで終劇となる。 

シンジくんが自己自身であろうと精一杯に願い、努力し、 
数々の苦難を乗り越えて元の居場所に戻ってきたのだとしても、 
他者であるアスカには、それが分からない。 
こんな不条理な世界がこそが、現実であるという事だ。 


ガイナックスの創始者・オタキング岡田斗司夫は、 
著書『オタクはすでに死んでいる』の中で、現代の「オタク」は 
他者との交わりの中で自己自身を喪失し、既に死んでいると述べた。 
「斑目」のような"絶望"の状態にあるというのだ。 

全ての「オタク」が「高坂」のように胸を張って生きるには、 
正規分布から否応なく外された不条理を受け入れるしかないのだが、 
"希望"の落とし所は、案外近くにあるのではないかと思える。 

きちんとメッセージを伝えれば、相手は理解してくれる。 
そして、理解してくれる人は必ず居る。 
庵野秀明という難解な存在がそうであったように、 
他者からの理解は"心の壁"を越えた先にあるものなのだろう。 
 


ご清覧ありがとうございました。

【ゲーム】ドラゴンズドグマ日記~覚者の剣(1)


ドラゴンズドグマ


 グランシス暦 149x年~

 世界は竜の炎に包まれた

 海は枯れ… 地は裂け…
 あらゆる生命体は絶滅したかに見えた

 だが…
 人類は死滅していなかった!



 中 世 紀 救 世 主 伝 説

 覚者の剣 第1話「オープニング」




―――



は~…
今日も無いやん。

何なんマジで、県全体で募集が5000件って。
完全失業者が県内に5万人も居るのに?
10人に1人しか就職出来ない計算じゃん。

ハロワの職員も態度悪いしさ、女だからってナメやがって。
小っちゃいのは生まれつきなんだよ。


リン

はぁ~…

帰ろ…

あ、ララコープ行かなきゃ。





いつものように夕食の買い出しを済ませてから、
タウンワークの求人誌を取って帰ります。

1人前にこしらえた料理を黙々と口に運びながら、
薄い冊子をペラペラめくっていると…。


 「★学歴不問・未経験者歓迎!」

 「★パート・フルタイム両方可、在宅勤務で稼げます!」

 「★スタッフの約半数が女性です!」

 「★年収例:700万円/月収40万円/18歳(入社1年目)」


なん…だと…?
どういう…ことだよ…?

デカデカと書かれた煽り文句が目に飛び込んでくる。

不景気と言われるご時勢に、なにこの高待遇。
ブラック臭がはんぱないんだけど。
どんな会社なんだろか…(;゚д゚)ゴクリ…


 「請負・人材派遣・人材紹介などをワールドワイドに展開!」

 「アウトソーシングなら株式会社ポーンシステム


ぁゃιぃ…

壮絶にぁゃιぃ…



派遣会社なんかがこんな条件を出す訳が無いわ。
ただでさえ「派遣切り」とかで正社員になる梯子を外されてるのに。


…!

いや、待てよ。
「ワールドワイド」ってどういう事だろか。
もしかしてこの会社、英語が使える人材を欲しがってるのかしら。
だとしたら…私にもきっとチャンスはあるはず。
イケメンの彼氏を作るべく、出会いを求めて英会話教室に通っていたのよ!

…イケメンが居なかったけどな!

よし…ちょっと怖いけど、応募するだけしてみよう。
在宅勤務で女性スタッフも多いって所も魅力的だしね。
恋活は失敗しても、就活は成功させてみせる!

履歴書と職務経歴書を準備し、翌日、人事担当者に連絡します。


―――


2日後、このいぶかしげな会社の支店営業所前に立っていました。

書類選考も無しに面接とは…
なるほど、採る気まんまんって事か。
ええい、鬼が出るか蛇が出るか…ままよ!


こんにちは…お忙しい所、失礼致します。
10時からの面接に伺いました、リンと申します。


> お待ちしておりました、こちらへどうぞ。


とても愛想の良い事務員の女性から応接室に通され、
間もなく面接官と思わしき男性が入ってきました。


ギレン

> 面接官
 どうも初めまして、本日の面接を担当させて頂きます、
 株式会社ポーンシステム、人事担当のギレンと申します。
 ご持参された書類をお預かりしますね。



むうぅ…オールバックの似合う凛々しいお方じゃないか。


> 面接官
 リンさんは派遣のお仕事は初めてですか?


はい、そうです。


> 面接官
 弊社では本人様のスキルに合ったお仕事を紹介しておりまして…、
 外語系にお強い方であれば、どこへでも紹介出来ますよ。


(ふふふ…狙い通り!)

…ところで、派遣先ではどのような仕事を委託されるのでしょうか?


> 面接官
 クライアント様に従ってサポートをして頂きます。
 本人様のスキルに応じて紹介先は変わって参りますが、
 スキルをお持ちでなくても、クライアント様のご希望に添えられましたら、
 そのまま採用という形になります。



(むむ…ようするにクライアントに気に入られろって事か。)


> 面接官
 もしお仕事をする上でご不明な点がありましたら、
 派遣先には弊社の社員も多くおりますので、
 現場で学びながらスキルアップしていく事も可能ですよ。


分かりました。有難うございました。


> 面接官
 それでは登録に関してですが、まずこちらのエントリーシートに
 お名前・ご住所など必要事項を記入されて下さい。


面接官の支持通りに、人材登録の申し込みをします。
これはなかなか好感触と見ていいのかな。


名前: リン
性別: 女性
  声: TYPE6
身長: 140.3
体重: 27.0



…なんだこの登録項目。


> 面接官
 ご登録頂けたようですね。有難うございます。
 それでは早速クライアント様にご連絡を致しますので、
 このまましばらくお待ち下さい。


…。

う~ん、対応は丁寧だったけど、まだ何か胡散臭いなぁ。
どんな仕事なのかは大体は掴めたけど、具体的な内容はまだ分かんないし、
結局はクライアント次第で何をするか変わってくるって事よね。

大丈夫なのか、ここ…。



> ガチャリ



ん?何の音?

…。

…げっ、鍵閉まってる。



嵌 め ら れ た !



うおおおおおおおおおおおーーーーっ!!
出せええええええーーーーーっっ!!



―――


北斗の拳

> ルーク
 覚者様、こちらです。

> アドナイ
 うむ。


> ルーク
 これが我らポーンの民を呼び出す媒介となる石碑、"リム"です。
 この石に向かって覚者様の従者となるポーンをお選び頂ければ、
 我らが民との契約は相成りましょう。


> アドナイ
 …ょぅι゛ょが良いな。


> ルーク
 …は?


> アドナイ
 …ょぅι゛ょだ。

 バラのような強き信念の中にも、コスモスのごとき恥じらいが零れ落ちる、
 そんな可憐なお年頃の女子を希望だ。


> ルーク
 …(゚Д゚;)


> アドナイ
 石に念じれば良いのか?

> ルーク
 …ハッ、そうですね。


> アドナイ
 よし…、逝くぞ。

 …むぅ?


> うおおおおおおおおおおおーーーーっ!!
 出せええええええーーーーーっっ!!



> アドナイ
 …。

> ルーク
 …。


> アドナイ
 話が違うぞ、ルーク。

> ルーク
 おかしいですね…。
 ポーンの民にこんな粗暴な子は…。

> アドナイ
 俺がいかに覚者として目覚めたとは言え、
 獰猛な肉食女子では、賢者モードにはなれぬ。


> どおおおおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーっっ!!


はっ…!
ドアが開いた?

…ってあれ?



> アドナイ
 …。

> ルーク
 …。


(…どこだここ。そして誰この人たち?)


> ルーク
 か…覚者様、こちらが従者となりますポーンにございます。

 これで契約は相成りました。
 我らポーンの民、あなたに従いましょう…。



 第1話~完


―――


【次回予告】

 てーれってー(あの曲)

 ポーンの民との契約を果たしたアドナイ。
 彼は胸に竜爪の傷を抱いていた。
 覚者として生まれ変わり、荒野を旅をするアドナイの、
 秘められた過去と、そして悲しい運命は!?


 次回、覚者の剣
 第2話「覚者あらわる所、乱あり」


お前はもう…死んでいる!
 


ご清覧ありがとうございました。

【オタク論】(2) 死に至る病


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↑アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』第16話のサブタイトル。



漫画やアニメなどのサブカルチャーに対する理解は、
それを支持する「オタク」と共に、有意水準の壁の向こうに追いやられている。

「オタク」の不幸は、ここまではまだ入口の段階だ。
存在を否定された「オタク」は、嗜好を理解をされないばかりか、
嫌悪の対象として一般的に認識されるようになった。
趣味に投資してきた分、ファッションに投資してきた人に比べて、
トレードオフで"見た目"の有意水準をクリア出来なくなっていたからだ。

カフカの『変身』に出てくる主人公のグレーゴルは、
ある日の朝、起床した自分の姿が巨大な害虫に変わっていた。
薄気味悪い姿に、妹のグレーテをはじめ、家族一同も嫌悪感を示す。
グレーゴルには家族に対する変わらぬ愛情が残っていたのだが、
家族は彼を次第に見放していき、彼は"絶望"して死に至る。
"見た目"は、人格ないし存在まで否定される理由にさえ成り得るのである。


こうなるともはや出力の有意差など関係ない。
オタクのステレオタイプが浸透するようになった頃から、
おおよそ"ボサボサの黒髪"で、"ダサいメガネ"をかけ、
"無粋な格好"をしている人なら、異常な値を出すに違いないと、
"見た目"でレッテルを貼られるようになった。
逆に、共通理解をされている"おしゃれな格好"の人などは、
正常な値であると見なされる事も多かった。


恋愛市場には、標準偏差というものが確かに存在する。
少女漫画論の回で述べたように、自分の理想をベースに
ルックスやファッションなど多岐にわたって有意水準が設けられ、
その水準内に正規に分布されているものだけが、恋愛対象となる。

これらの傾向は、『げんしけん』によく表されており、
イケメンの「高坂真琴」と、そうでない「斑目晴信」は、
同じアニオタでも一般人の「春日部さん」からの扱われ方が全然違う。
かたや「春日部さん」と交際し、自分の趣味を披露しても甘受される。
かたや日陰者で、「春日部さん」の鼻毛を指摘すればグーで殴られる。
変身したグレーゴルと同様に、"見た目"の有意水準に従って
「生理的に無理」という判定がなされているのだ。

いつしか「オタク」はこうした不条理な有意差に対し、
「ただしイケメンに限る」という言葉を使うようになった。
この言葉は、イケメンを否定しているのではない。
正規分布から外れた孤独な自分に"絶望"する、自己否定の言葉である。


―――


カフカはニーチェの実証主義の影響を受けており、
自分にとって、また他者にとっても誠実でありたいカフカは、
実証の過程を飛ばして決め付けを図る現実世界から乖離した存在だった。
文学を揶揄する偏見に満ちた父親への反目は、
かえって自分の中の文学意欲を高め、そして孤独にした。

カフカの文学は、彼が死ぬまで一般的には注目されなかった。
それは、彼はユダヤ人だった事も関係していると思われる。
しかしその死後、少ない理解者達によって彼の名前は世界中に広められた。
今では20世紀最高の文学に数えられるほどの人物が、
このような孤独な人生を歩んでいようとは、何という不条理だろうか。


実存哲学の祖として知られるデンマークの哲学者・キルケゴールは、 
こうした不条理を、著書『死に至る病』の中で以下のように説明している。
一般の人は、自己自身であろうという大それた事をせずに、
群衆の中に混じって他の人と同じようにしてる方が安全であると考えるが、
自己自身であろうとする人にとってそれは"絶望"である、と。

「斑目」はオタクファッションを「春日部さん」に笑われ、
「オタク」に見えないような服を買いに街に出るが、値札を見て愕然とし、
「買い物は自分の判断で決める。なぜならそれが自分そのものである。」
と、自己自身としての精一杯の矜持を口にしている。
(しかし、彼は結局それなりの値段の服を買い、妥協をするのだが。)

漫画オタやアニオタは、カフカと同じ苦悩を抱えている。
「オタク」にとって自己自身であろうとする行為は、
一般の人から見る有意水準から外れたものであっても、
彼らにとってはそうしなければ生きる価値が見出せないものだろう。
それを止めてしまえば、自分が死んだのと同じである。
だからこそ、「オタク」は奇異の目で見られ、たとえ嫌悪されても、
自己否定という死に至る病="絶望"と戦いながら、
自己自身を確認する為に、「オタク」としての矜持に生きるのだ。


『死に至る病』は、『新世紀エヴァンゲリオン』にて、
アニメ版の第16話のサブタイトルとして使用されている。

この作品がなぜ、オタクから絶大な支持を集めたのか、
次回は、主人公・碇シンジくんの心の葛藤を探ってみよう。

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ご清覧ありがとうございました。

【雑記】道場主からのお知らせ


漫画道場


どうも皆様、初めまして。
既にお見知り置き下さってる方、こんにちは。

「漫画道場」の管理人です。

"管理人"と聞いて、ひよこエプロンと竹箒の女性を連想する方であれば、
どうぞそのイメージは燃えないゴミに出してお捨てになって下さい。
ちなみに佐世保市指定のゴミ袋は大袋45Lで4枚入り880円です。

購入を拒否される方、私の事を"道場主"とでもお呼び頂けると喜びます。
いつも足を運んで下さり、誠に有難うございます。



さて今回はというと、道場主からのお知らせをいくつか。

まず、24日(木)から日記を付けていきます。
『ドラゴンズドグマ』というゲームのネタ日記になります。(漫画かんけいねー)
興味をお持ちでない方はスルーして頂けるよう、宜しくお願いします。
逆に興味をお持ちの方には、がっつり食い付いて頂ける内容になると思います。

次に、来週からは漫画研究の更新頻度が下がります。
正確には、ゲームのネタ日記とコミック短評の更新が主になります。
それでも週1回は漫画研究の更新もやっていく予定です。

もうバレてるとは思いますが、元々が週2回の更新だったんですよね。
道場主が大学の頃に書いた論文を基に記事を再構築してます。
再構築という所がミソで、要は新たな観点を加えて書き直してます。
ストックは充分にあるんですけど、書き直すのに時間が必要なので、
更新頻度を落としている間に書き溜めるつもりです。
記事の質が落ちてしまう事はありませんです、はい。


これまで当道場に数多くお越し頂いた皆様のおかげで、
先週、ライブドアブログ内でのランクレベルが☆☆になりました。
こんな濃い内容のブログに、ここまで支持が頂けるとは思っておりませんでした。
その皆様のご期待に添えない方向に向かいかねない事は承知の上ですが、
つーかそもそも漫画道場を謳っときながらゲームすんなって話ですが、
だって面白いネタが思いついちゃったんだもの。

もし宜しければ、道場主の気まぐれにもしばらくお付き合い下さいませ。


ともあれまずは明日、「オタク論」の第2回を更新致します。
全3回の予定で、本論の3回目は通常通り週末にアップ予定です。


それでは。
 


ご清覧ありがとうございました。

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