ドラゴンクエスト10


↑オンラインで無かったら…ねぇ。


今、私が注目している事と言えば…。
8月2日に発売されたWiiの新作ソフト、『ドラゴンクエスト10』です。

漫画はどうした。

私はWiiは持っているのですが、『ドラクエ10』は買ってないんですよね。
『9』まではやってましたけど、さすがにオンラインというのは…。
けっこうこういう人が多いみたいで、先日発表された同ゲームの初週販売本数は
前作の2割程度の42万本と、話題を集めるには至っていません。

『ファイナルファンタジー11』で既にオンライン化の実績のある
スクウェアエニックスですが、『FF11』はPC市場をメインターゲットにしており、
家庭用ゲーム機でのオンライン化というのはかなりの冒険だったと言えます。
しかもそれがドラクエで、しかもナンバリングタイトルでと来れば、
従来のファンから疑問符が付いても不思議ではありません。


引用:アニメな日々、漫画な月日 様

今回はとっても個人的な見解になりますが、
なぜスクエニがドラクエシリーズのオンライン化に踏み切ったか、
経済学の観点からちょいちょい補足的に解説をしつつ、
なぜ私がそれを支持しなかったのかを述べていきたいと思います。

なお、強烈な【Wii下げ】の文章が含まれていますので、
任天堂ファンの方はご注意下さい。



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さて、まずはスクエニの狙いです。スクエニは合併前から、
バランスシート(財政状況)の不安定さが指摘されていました。
両者とも出せば売れる看板タイトルを抱えながらも、
開発スパンの長期化で、収益が上がらない年があったりしたので、
合併してソフト供給サイクルを安定化させました。

しかし、結局はこれもソフトの売上に左右されてしまいかねない、
フロー(流動)型の収益構造には変わりありません。
そこでさらに安定化させる為に行ったのが、ストック(固定)型への転換。
つまり、定常的な収益が期待出来る"オンライン化"です。

スクエニは、企業として当然の選択をしています。
フローに依存した自転車操業では、バランスシートの修復は不可能です。
まずここを念頭に置いておく必要があります。


『ドラクエ10』のプレイ人口が42 → 50万人に伸びたと仮定します。
50万人の人が6000円の商品を買った場合、営業収益は30億円になります。
このうち2割を小売や運送会社などに払ったとして、残りは24億円です。
そこからユーザーが毎月1000円の月額利用料を課金したとすると、
月単位で5億円のストックが得られる事になります。
課金ユーザーは4週置きに1割ずつ減っていく事にしましょう。

では、前作『ドラゴンクエスト9』の収益はどうだったか。
400万人の人が5000円の商品を買ったと計算すると、営業収益は200億円です。
小売・運送もろもろ差し引いて、最終的な収益が160億だったとします。

5億円+4.5+4.05+3.645+…と、継続的な収益構造が確立された場合、
『ドラクエ10』は1年後に150億円を売り上げ、前作の収益を越えるのです。
あな恐ろしや、これがストック型の強みですね。


と こ ろ が 、、、


世の中そうは上手くはいきません。

仮に課金ユーザーが倍の早さで減っていったらどうなるでしょうか?
1年後で95億、2年経ったら全く伸びず100億円に留まります。
サーバー管理費や人件費を差し引けば、前作より確実にマイナスです。
つまりストックを保持するには、いかに長く遊んでもらうかがポイントである為、
ユーザーを繋ぎ止める方策が絶対不可欠という事です。

スクエニ側では10週ごとに大規模アップデートを予定してるそうですが、
実はこれ、大きな落とし穴があります。


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ここまで見てきた流れは、あくまでメーカー目線から見た皮算用に過ぎません。
ユーザー目線から見た場合、長く遊びたくても遊べない、
無視する事の出来ない懸念材料が、ここに重く圧し掛かってきます。

第一の懸念が、Wiiのハード寿命です。

『FF11』が10年間も継続したストックを得る事が出来たのは、
先に述べた通り、PC市場をメインターゲットにしていたからです。
しかし、『ドラクエ10』は家庭用ゲーム機で販売した事で、
ゲーム機本体の商品寿命とも戦っていかなければならなくなりました。
SD機であるWiiはハード寿命が既に尽きている上に、
折りしも時代はゲーム機からスマートフォンに移り変わる真っ最中。
10年間も戦えるオンラインゲームが据置ゲーム機で実現するはずがありません。

WiiUが2012年内に発売されたとしても、全く同じ事が言えます。
新型ハードと言えども10年も持たせるだけの設計がなされてないので、
スクエニの目論見は最初からアテが外れている事になります。


第二の懸念が、ユーザーの出費です。

第一の懸念より、ユーザーが毎月の利用料金だけでなく、
ハードの購入でさらなる金銭的な負担を強いられる事が分かります。
もちろんそのまま現行機に留まって遊べばよいのでしょうが、
魅力的な新作ソフトは後から次々に生まれてきます。
アップデートがユーザーを継続的に満足させられるものでなかったら、
ハードの過渡期を迎えた所で、これ以上の出費を敬遠する人が必ず現れます。

これらの懸念材料が残り続ける限りは、売上にもマイナスに作用する為、
『ドラクエ10』は『FF11』の成功をなぞる事が出来ないでしょう。


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家庭用ゲーム機でオンラインゲームを提供する事を現実的に見た場合、
『ドラクエ10』はリリースのタイミングも逸していました。

初週販売本数を2年前に発売された『モンスターハンター3(tri)』と比較すると、
『ドラクエ10』は42万本に対し、『モンハン3』は58万本です。
前者の方が若干スローペースかな?なんて思えてしまいますが、
この2年の間にWiiの普及台数が1000→1200万台に拡大している点を考慮すれば、
前者は29人に1人、後者は17人に1人が購入した計算になる為、
『ドラクエ10』は従来のユーザーを数字以上に取り込めていない事が分かります。

両者はともに携帯機で発売した前作の販売本数が400万本を越えています。
ユーザー数がほぼ互角のタイトルでこれだけ差が生まれたのには、
ソフトのオンライン化だけに起因するのではなく、
商品寿命が尽きたハードでリリースしたのも理由の1つと見られるのです。


最後に個人的な話をすると、『モンハン3』のオン環境はとにかく最悪の一言でした。
そのほとんどが、Wiiの特性に起因するものであった事を覚えています。
この時に味わったハードの制約とリテラシーの格差は、
ドラクエの新作に対してもマイナス印象を植え付けるに充分でした…。

実際は面白いのは遊ばずとも分かるんですが、
積極的に遊びたいという気持ちを萎えさせる要因があって、
それを敬遠している人も多いのではないかと思います。

『ドラクエ10』は家庭用ハードを選択した事に必ず足を引っ張られるでしょうが、
私はそれ以上に、Wiiに対する感情的な面で購入を避けました。


ちなみに私は、任天堂の十年来のファンです。
WiiUが、NINTENDO64のランドネットサービスの頃からの、
山内前社長の夢を実現したマシンである事も全て承知しています。

その上で、任天堂のハード設計思想には疑問を呈しています。
クラシックコントローラーPROであったり、3DSの拡張スライドパッドであったり、
経年変動に耐えられない設計のミスマッチが多すぎる。
アンバサダープログラムや3DSLLの投入に至っては、言語道断です。
ユーザーにそういう所で損をさせると、信頼も損ないかねないと思ってます。
顧客満足を二の次にして企業論理を優先させたメーカーがどうなったか、
3Dテレビの市場展開の失敗を見ても分かります。

スクエニに対しても、ストック型への転換を図る事は企業として当然ですが、
必ずしもそれがユーザーにとってプラスになるとは思えません。
少なくとも『ドラクエ10』は、ユーザー目線から見てフレンドリーではありません。
10年間戦える息の長いソフトにしていくのであれば、
10年経っても衰えないような設計思想を持ったハードで発売すべきでした。


任天堂もスクエニも、顧客満足の観点から見た商品作りを、
もう1度、思い出してもらいたい所です。
 


ご清覧ありがとうございました。